G20とグローバル市民社会運動

  • G20とC20の開催

今年6月に大阪でG20サミットが開かれる。サミットの他に、分野別のG20閣僚会合がその前後に各地で開催される。こうした政府レベルの会合に合わせて、「エンゲージメント(参画)グループ」といわれる8分野の非政府レベルの会合が開かれている。しかしその内容についてはメディアがほとんど報じないため、関係者以外にはあまり知られていないのが実情だろう。

エンゲージメントグループは、政府側と連携しつつそれぞれの政策提言を作成し、G20に提起することを目的としている。それらを列挙すれば、B20(経済界)、C20(市民社会)、L20(労働組合)、S20(科学者・学界)、T20(シンクタンク)、W20(女性)、U20(都市)、Y20(若者)である。G20は2008年のリーマンショックを契機に発足し、議長国を交代させながら毎年開催されてきた。それとともに、非政府のエンゲージメントグループも次第に形を整えていった。

2013年にスタートしたC20(Civil 20)は、G20に参加する各国の有力NGOを中心に組織され、グローバルな課題に関する政策提言を行ってきている。今回のC20は4月21日から23日まで東京で開かれた。主催者発表によれば、世界40カ国からのべ830人が参加したという。

 

  • C20 東京集会の内容

 C20東京集会は、国際協力関連の分野に取り組んでいる日本のNGOが軸になって、70団体ほどが参加して開催準備にあたったという。準備の過程で、内外の410人がインターネットを通じて討議し、政策提言書(ポリシーパック)を作成している(英文A4版64頁)。内容的には、反腐敗、教育、環境・気候・エネルギー、ジェンダー、保健、インフラ、国際財政・金融、労働・ビジネス・人権、市民社会組織、貿易・投資の10テーマから構成されている。そしてテーマごとに、G20のコミットメント、課題、提言という3項目を立てて記述されている。

この提言書をもとにして開かれたC20東京集会は、1日目に全体会「民主的ガバナンスにおける透明性の重要性」「東京民主主義フォーラム宣言の採択」と七つの分科会が開かれた。2日目は、G20日本政府代表(外務省)を交えたハイレベルパネルと七つの分科会がもたれた。3日目には、C20以外のエンゲージメントグループからのメッセージ紹介、G20日本政府代表(財務省)を交えたハイレベルパネル、三つの分科会などが開かれた。

各分科会の性格は様々であり、その意義は個別に論じられる必要があるが、以下ではそこには立ち入らず、全体を通じた評価を記しておきたい。

 

  • C20をどう評価すべきか

 G7が先進国政府の会合であるのに対して、G20にはBRICSその他の有力な途上国政府が加わっており、それだけSDGsなどグローバルな課題が取り上げられる傾向にある。G7、G20それぞれの開催に際して、市民社会の側の関連した行動が組織されてきたが、C20のようなエンゲージメントグループの活動はG20に限られているようである。

しかし、C20の取り組みは、政府に提言を行う点に集約されるため、政治的インパクトに乏しく、メディアでもほとんど報道されない。また、政府を補完するような協調的な活動スタイルのため、批判的・対抗的な視点が弱い。政策提言書の構成に示されるように、まずG20のコミットメントを前提にして、その達成度を評価して課題を抽出し、提言をまとめるという形にとらわれている。草の根の市民運動への広がりに欠けている点にも限界がみられる。提言を行うにしても、大衆的基盤を拡大させ、批判的視点を備えた提起を追求していく必要があろう。

一方、グローバルな課題に対する市民社会の運動としては、かつてはG7(G8)サミット、WTO閣僚会議、IMF・世銀総会などに対抗する行動が組織されていた。その潮流は世界社会フォーラムへと集約されていった。しかし、そうした反グローバリゼーション運動は、以前ほどの存在感を示せなくなっている。日本で開催されたサミットについていえば、2000年の沖縄サミット、2008年の洞爺湖サミットでは大きな対抗アクションが組織されたが、2016年の伊勢志摩サミットはあまり盛り上がらなかった。2019年のG20サミットでは、どのような規模の対抗運動が準備されているのか、現時点で情報は少ない。

グローバリゼーションは日々進行しており、その負の影響をいかに制御していくか、主要国の政府に任せておくわけにはいかない。2019年のG20大阪サミットを契機にして、協調的な提言活動と対抗的な反グローバリゼーション運動という市民社会運動の2極分化をどう超克していくか、新しい構想と知恵が求められているように思われる。

(『Political Economy』2019年5月1日)