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Published: Sunday, 28 August 2022 17:29
◆コロナ禍で他社を引き離す
2020年から続く新型コロナの世界的大流行によって世界の自動車メーカーは苦戦を余儀なくされているが、トヨタ自動車は2021年の世界新車販売台数1135万台(ダイハツ、日野、スバルを含む)、前年比9%増を達成し、2年連続で世界首位の座を維持した。2位のフォルクスワーゲンが888万台(前年比5%減)、3位の日産・ルノー・三菱が768万台(前年比0%増)だったから、トヨタの強さは際立っている。
米国市場でも2021年にトヨタはGMを抜いて販売台数首位に立った。米国市場で海外メーカーがトップになるのは史上初めてのことだ。2022年に入ってもトヨタは強さを維持し、上半期(1~6月)の世界販売台数は513万台と前年同期より6%減少したものの、2位フォルクスワーゲンが387万台(22%減)と大きく落ち込んだため、3年連続で世界首位を保つことになった。
各社が苦戦した要因は、コロナ禍で工場の操業停止、サプライチェーンの寸断が生じたためだが、なかでもデジタル化の波のなかで半導体が圧倒的に不足したことが大きかった。トヨタは競合他社に比べて半導体調達難の影響をある程度回避できたように思われる。
表1によって、国内大手8社の2021年度(2021年4月~2022年3月)における生産・販売実績をみよう。各社の世界生産台数では、トヨタ、スズキ、ダイハツ、三菱が前年度比プラス、ホンダ、日産、マツダ、スバルが前年度比マイナスを記録した。世界販売台数も同様の傾向であり、トヨタ、スズキ、三菱がプラス、他の5社がマイナスだった。また国内生産台数は三菱以外はトヨタを含めて7社がマイナスとなった。
表1 自動車8社の生産・販売台数(2021年度)
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世界生産
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国内生産
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世界販売
|
|
国内生産
|
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(千台)
|
(%)
|
(千台)
|
(%)
|
(千台)
|
(%)
|
比率(%)
|
トヨタ自動車
|
8,570
|
4.7
|
2,761
|
-5.4
|
9,512
|
4.7
|
32.2
|
ホンダ
|
4,143
|
-8.6
|
634
|
-7.7
|
4,363
|
-6.3
|
15.3
|
日産自動車
|
3,390
|
-10.7
|
446
|
-13.8
|
3,821
|
-9.0
|
13.2
|
スズキ
|
2,822
|
6.4
|
840
|
-9.7
|
2,707
|
5.3
|
29.8
|
ダイハツ工業
|
1,518
|
8.8
|
841
|
-8.4
|
907
|
-1.7
|
55.4
|
三菱自動車
|
1,025
|
25.9
|
421
|
14.7
|
937
|
16.9
|
41.1
|
マツダ
|
1,024
|
-12.6
|
696
|
-6.8
|
1,251
|
-2.8
|
68.0
|
スバル
|
727
|
-10.3
|
455
|
-13.3
|
812
|
-11.3
|
62.6
|
出所:「朝日新聞」2022年4月28日
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注:生産と販売の%は前年度比増減率
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トヨタ、ホンダ、日産の上位3社を比べると、世界生産と世界販売でトヨタのプラス、ホンダ、日産のマイナスが対照的であり、トヨタの一人勝ちといった様相だった。ホンダと日産は国内生産比率がきわめて低いことも、トヨタとの違いを示している。
◆空前の好業績はさらに続くのか
表2によれば、2022年3月期(2021年4月~22年3月)のトヨタは営業収益、純利益とも空前の好業績だった。営業収益は31兆3800億円、純利益は2兆8500億円とかつてない規模に達した。販売台数は2020年3月期の水準に達していないにもかかわらず、利益を大きく伸ばすことができたのは、利幅の多い高級車の売上が増加したためだろう。
表2 トヨタの主要経営指標
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2019年4月
|
2020年4月
|
2021年4月
|
2022年4月
|
|
~20年3月
|
~21年3月
|
~22年3月
|
~23年3月
|
営業収益(億円)
|
298,665
|
272,146
|
313,795
|
345,000
|
純利益(億円)
|
20,361
|
22,453
|
28,501
|
23,600
|
販売台数(万台)
|
896
|
765
|
823
|
885
|
従業員数(人)
|
361,907
|
366,283
|
372,817
|
|
平均臨時雇用人員(人)
|
86,596
|
80,009
|
87,120
|
|
税金費用(億円)
|
6,818
|
6,500
|
11,159
|
|
実際負担税率(%)
|
24.4
|
22.2
|
28.0
|
|
出所:トヨタ自動車「有価証券報告書」2022年3月期他
|
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注:2022年4月~23年3月は2022年8月時点での決算見通し
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表3によって国内他社と比較してみると、売上高、純利益はスバルを除いて各社とも前年度に比べて増加しているが、増加率はトヨタが優勢であり、トヨタとホンダ以下各社との差が開いたことが明らかだ。なかでも純利益の増加率はトヨタが際立っている。
利益増加の要因について、トヨタは販売台数の拡大とともに為替変動の影響を指摘し、資材高騰というマイナス要因をカバーした点をあげている。しかし、2023年3月期の業績見通しでは、最近の世界的な物価上昇、特に鉄鋼、樹脂原料等の原材料費膨張が円安というプラス要因を上回り、利益は落ち込むとみている。コロナ禍によるサプライチェーンの混乱は在庫を圧縮するトヨタ生産方式に打撃を与えており、原材料費の高騰はトヨタを支える部品企業群を苦境に追い込むだろう。
表3 自動車7社の経営実績(2022年3月期)
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売上高
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|
純利益
|
|
|
(億円)
|
(%)
|
(億円)
|
(%)
|
トヨタ自動車
|
313,795
|
15.3
|
28,501
|
26.9
|
ホンダ
|
145,526
|
10.5
|
7.070
|
7.6
|
日産自動車
|
84,245
|
7.1
|
2,155
|
ー
|
スズキ
|
35,683
|
12.3
|
1,603
|
9.5
|
マツダ
|
31,203
|
8.3
|
815
|
ー
|
スバル
|
27,445
|
-3.0
|
700
|
-8.5
|
三菱自動車
|
20,389
|
40.1
|
740
|
ー
|
出所:「朝日新聞」2022年5月14日
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注:%は前年度比増減率。純利益の―は前年度赤字のため
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算出せず。
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一方、表4によって地域別の事業実績をみると、生産台数・販売台数ともに日本はマイナス、海外はプラスだった。海外ではアジア、その他(中南米、オセアニア、アフリカ、中東)の伸びが北米、欧州を大幅に上回った。その結果、生産台数はアジアが北米に接近するまでに地位をあげた。営業収益では、全地域でプラスを記録したが、日本、北米は相対的にそれ以外の地域より低かった。営業利益はどの地域もかなりの伸びをみせたが、アジアが54.2%増の6724億円に達し、北米の5658億円を上回ったことが注目される。
表4 トヨタの地域別事業実績(2021年4月~2022年3月)
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生産台数
|
|
販売台数
|
|
営業収益
|
|
営業利益
|
|
|
(万台)
|
前期比(%)
|
(万台)
|
前期比(%)
|
(億円)
|
前期比(%)
|
(億円)(億利益
|
前期比(%)
|
日本
|
374
|
-5.3
|
192
|
-9.5
|
159,914
|
7.0
|
14,234
|
23.9
|
北米
|
175
|
6.7
|
239
|
3.5
|
111,665
|
17.6
|
5,658
|
41.0
|
欧州
|
71
|
10.1
|
102
|
6.0
|
38,678
|
23.4
|
1,630
|
50.9
|
アジア
|
150
|
47.6
|
154
|
26.3
|
65,306
|
29.4
|
6,724
|
54.2
|
その他
|
46
|
51.3
|
135
|
31.7
|
29,282
|
56.3
|
2,382
|
298.0
|
合計
|
816
|
8.0
|
823
|
7.6
|
313,795
|
15.3
|
29,957
|
36.3
|
出所:トヨタ自動車「有価証券報告書」2022年3月期
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|
|
|
ちなみに国別の販売台数を示せば、米国233万台、中国194万台が飛び抜けて多く、それに続くインドネシア、タイ、カナダ、オーストラリアなど20万台水準の国々と差をつけていた。
◆電気自動車への転換は進むのか
世界首位の座にあるトヨタにとって、脱炭素革命への対応、ガソリン車から電気自動車へのシフトは簡単ではない。EU、中国、米国など世界の主要自動車市場では、2050年のカーボンニュートラルに向けて、2030年代にはガソリン車を禁止しようとしている。主要な自動車メーカーは一斉に電気自動車へのシフトを進めている。
しかし、トヨタはこれまで電気自動車生産には消極的で、ハイブリッド車を広義の電動車と位置づけつつ、内燃機関を維持した多様な車種の開発を進めてきた。表5はトヨタが公表している電動車の生産実績だが、ハイブリッド車が大半であり、これは世界標準では「排ガスゼロ車」とは認められていない。トヨタがハイブリッド車の成功体験に囚われているうちに、世界では電気自動車の市場が急速に拡大しており、2021年の世界販売台数450万台が2022年には700万台へと急増する見込みだ。
表5 トヨタの電動車販売実績
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2019
|
|
2020
|
|
2021
|
|
|
|
(台)
|
(%)
|
(台)
|
(%)
|
(台)
|
(%)
|
|
HEV
|
1,860,188
|
96.7
|
1,902,621
|
97.1
|
2,482,236
|
94.7
|
|
MHEV
|
4,602
|
0.2
|
3,320
|
0.2
|
7,482
|
0.3
|
|
PHEV
|
56,524
|
2.9
|
48,513
|
2.5
|
111,882
|
4.3
|
|
FCEV
|
2,494
|
0.1
|
1,770
|
0.1
|
5,918
|
0.2
|
|
BEV
|
0
|
0
|
3,346
|
0.2
|
14,407
|
0.5
|
|
合計
|
1,923,808
|
100.0
|
1,959,570
|
100.0
|
2,621,925
|
100.0
|
|
出所:トヨタ自動車ウエブサイト>企業情報>会社概要>販売・生産・輸出実績
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電気自動車のメーカーは、表6に示されるようにテスラを先頭に、上海汽車集団、BYDなどの中国勢がこれに続き、トヨタははるか後方の21位と出遅れている。またトヨタは、ガソリン車禁止政策を緩和させようと政治工作を行い、脱炭素革命を妨害しているとして、世界の環境運動団体から批判されている。有力な環境NGOのグリーンピースは、2021年11月、世界の自動車大手10社の気候変動対策でトヨタは最下位と評価した。また、2022年6月のトヨタ株主総会では、デンマークの年金基金から、トヨタの脱炭素の姿勢に対する質問状が提出された。
表6 電気自動車(EV)の会社別販売台数
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会社名
|
販売台数(万台)
|
EV比率
|
|
2021年
|
2022年上期
|
(%)
|
テスラ
|
93.6
|
56.4
|
100
|
上海汽車集団
|
59.6
|
31.0
|
21
|
フォルクスワーゲン
|
45.2
|
21.7
|
5
|
BYD
|
32.0
|
32.4
|
43
|
日産・ルノー・三菱
|
24.8
|
13.3
|
3
|
現代自動車
|
22.3
|
16.9
|
3
|
ステランティス
|
18.2
|
11.6
|
3
|
長城汽車
|
13.5
|
|
11
|
広州汽車集団
|
12.0
|
10.0
|
29
|
浙江吉利集団
|
11.0
|
12.3
|
8
|
BMW
|
11.0
|
|
4
|
トヨタ自動車
|
1.4
|
|
0.1
|
出所:「日本経済新聞」2022年3月18日、7月28日
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注:EV比率は2021年のデータ
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|
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こうした事態に対して、2021年12月、トヨタは2030年の電気自動車世界販売目標を200万台から350万台に引き上げ、4兆円(うち車載電池2兆円)を投資すると発表した。2022年5月には、初の量産型電気自動車bZ4Xを発売した。とはいえ、トヨタはホンダのように電気自動車一辺倒になるのでなく、水素エンジン車など、エンジン技術を残しつつ燃料の脱炭素化を進める戦略を堅持している。しかし、膨大な資金を要する電気自動車、水素エンジン車、燃料電池などの開発を並行して進めていけるのか。またこれまで協力してきた多数の部品メーカーを円滑に再編成していけるのか。自動車産業全体の大転換を前にして、世界王者トヨタの前途はかなり厳しいのではないだろうか。(2022年9月)
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Published: Saturday, 02 November 2024 15:24
衆議院選挙は自公政権の敗北に終わり、政治状況は流動的になった。政治資金問題がこの変化をもたらしたわけだが、日本が取り組むべき格差是正問題については、選挙戦を通じて焦点化されなかった。しかし、資産所得が労働所得を上回ることから生じる格差拡大は放置できない水準に達している。格差是正のための税制改革、富裕層への課税強化は重要な政策課題といわなければならない。
◆各政党は公約で何を提起したのか
主な政党の税制改革政策は3グループに分けられる。第一は自民党と公明党であり、格差是正の税制改革は掲げられなかった。自民党は、岸田前首相、石破首相ともに金融所得課税に言及したものの、株価下落に直面すると簡単に棚上げするという経緯があり、今回の公約には「経済成長を阻害しない安定的な税収基盤の構築の観点から、税制の見直しを進めます」とだけ書き、どこをどう見直すのか何らの言及もなかった。公明党は税制改革そのものを取り上げていない。
第二は維新の党と国民民主党であり、消費税・所得税減税を通じた消費喚起、経済成長を政策の基調としつつ、維新の党は金融所得の総合課税化、マイナンバーと銀行口座の紐付け、国民民主党は給付付き税額控除、マイナンバーと銀行口座の紐付けを提起した。
第三は立憲民主党と共産党であり、ともに総合的な税制改革案を打ち出した。立憲民主党は格差是正を目指し、所得税の累進性強化、各種控除見直しによる所得再分配の強化、金融所得への超過累進税率の導入、将来の総合課税化、消費税の軽減税率廃止、給付付き税額控除の導入、相続税・贈与税の累進性強化を提案した。共産党は消費税の5%への引下げ、将来的な廃止、大企業の内部留保課税、株式配当の総合課税化、株式譲渡所得は高所得者には30%以上課税、所得税の累進性強化、相続税・贈与税の最高税率を50%から70%へ引上げなどを掲げた。さらに注目すべきは富裕税の創設であり、純資産5億円超の富裕層に対して、5億円を超過する部分に0.5~3%の累進税率で毎年課税し、およそ1兆円程度の税収を見積もっている。
◆日米の富裕層増税政策
多くの党は消費税減税を訴えたが、富裕層増税などとセットで打ち出すべきものだろう。
あまり目立たないが、日本ではすでに2023年度税制改革で「ミニマム富裕税」が創設されている。これは、所得が3億3千万円を超える富裕層に対して、最低でも22.5%の課税を行うもので、金融所得が所得の大半を占める富裕層の税負担率が低下する「1億円の壁」問題を一定程度是正する措置といえる。対象者は少なく、税率引き上げはわずかであり、たいした増収効果も見込めないが、今後の格差是正策の端緒になりうるだろう。
一方、米国のバイデン政権は様々な富裕層増税政策を提起している。投資純利益が20万ドルを超える場合は通常の税率に3.8%追加、40万ドルを超える場合は5%追加する所得税増税、所得1000万ドル超の富裕層に対して超過分に5%、2500万ドル超に対しては8%の追加課税、純資産1億ドル超の富裕層に対して資産の含み益を含めて最低25%課税する富裕層ミニマム課税(含み益課税は資産課税ではなく、含み益が将来実現することを想定した所得税の前倒し課税)などが主なものだ(詳しくは、岡直樹「金融所得課税・富裕層課税の新たな展開」財務省『フィナンシャル・レビュー』2024年8月号参照)。
バイデン政権の様々な富裕層増税案は、増税論議を封印している日本とは対照的だ。目下のところ、提案に対する議会の抵抗が強く、修正あるいは不成立に終わっているが、富裕層課税が時代の要請であることを示している。
◆G20財務相会合におけるグローバル富裕税の提起
ピケティの弟子にあたるガブリエル・ズックマンはかねてグローバル富裕税を提起していたが、2024年のG20議長国であるブラジル政府の委託を受けて、6月に超富裕層グローバルミニマム課税に関する報告書を公表した。それによれば、世界の10億ドル以上の資産をもつ超富裕層約3000人に対して、世界共通して実効税率が最低2%になるように富裕税を課税すれば、年間2000~2500億ドルの税収があげられるという。
これは現在の世界のODA総額に匹敵する規模であり、実現すればSDGs達成に大きく寄与するだろう。範囲を広げて、資産1億ドル超の富裕層約6万人に3%課税すれば税収は6000億ドルと推計される。富裕層は国外移住などで租税回避行動をとると想定されるが、課税権力のグローバル化が進展しているため、すでに実現しているグローバルミニマム法人税と同様、国際協調によって対応が可能であり、またすべての国が参加しなくても実施できると論じている。
この報告を受けて7月のG20財務相会合ではこの構想が議題に取り上げられた。また、国連租税協力枠組条約の創設プロセスでも、グローバル富裕税は早期議定書のテーマの一つにあげられており、今後の取組が注目される。
(Political Economy No.272, 2024年11月1日)