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米中覇権争いと日本の隘路

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公開日:2023年01月03日(火)14:18

中国共産党第20回党大会において習近平総書記は、「中国の特色ある大国外交を推し進め、覇権主義と強権政治に反対」すると述べた。覇権主義は米国を指すと思われるが、「中国の特色ある大国外交」もまさに覇権主義に相当するだろう。習近平報告の数日前、バイデン米政権は「国家安全保障戦略」を発表し、中国を「国際秩序を塗り替える意図と能力を持つ唯一の競争相手」と規定した。

 トランプ政権期に表面化した米中覇権争いは、今後長期に渡って継続すると考えられるが、グローバル経済下の「米中新冷戦」はかつての米ソ冷戦とは性格を異にしている。以下では米中経済関係の対立と依存の入り組んだ構造を概観し、その狭間で埋没しつつある日本経済の位置を明らかにしたい。

 

◆米中新冷戦の陣形

 中国の勢力圏づくりは、安全保障面では上海協力機構、経済面では「一帯一路」構想に即して進行してきた。中国、ロシア、中央アジア諸国で2001年に結成された上海協力機構は、その後インド、パキスタンをメンバーに加え、最近はイラン、トルコ、さらにエジプト、サウジアラビアなどへの拡大を志向し、総じてユーラシアにおける非米国家連合の趣きを呈してきている。

 一方、中国中心の経済圏構築を目指す「一帯一路」構想は、中国の資金、資材、労働力等を用いて各地にインフラを建設するプロジェクトとして展開しつつあり、その範囲は東欧、アフリカにも及んでいる。中国が2000~2017年に世界各国に供与した開発協力資金は8000億ドルを超え、米国を凌いだと推計されている。こうした融資によって、GDPの10%以上の対中国債務を抱えた国が44カ国に達したという調査もある(日経新聞10月13日、11月5日)。

 ただし、高利の過剰な融資によって返済が滞るケースが相次ぎ、「債務の罠」の悪評が生じるとともに、中国側の資金事情も悪化したため、近年は規模を縮小させている。習近平の報告で「「一帯一路」建設の質の高い発展を進める」と述べたのも、そうした事情の反映と思われる。

 この他、東アジアについては、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)が15カ国によって2022年に発効しているが、経済・貿易規模の点で、中国が中核に位置することは明らかだ。日本はインドを加えて中国を牽制する狙いであったが、インドは参加を見送っている。

 こうした中国の対外拡張政策に対して、米国は「自由で開かれたインド太平洋」構想を対置し、中国の影響力拡大の抑制を試みている。その表れが、軍事面ではAUKUS(米英豪)、外交・経済安全保障面ではQuad(日米豪印)、経済面ではIPEF(インド太平洋経済枠組み)14カ国の組織化だ。IPEFに先立って、TPP(環太平洋パートナーシップ)が結成され、当初は米国主導のもと、中国を牽制する狙いであった。しかし、トランプ政権が離脱を決定し、バイデン政権もこれを継承する一方、中国が加盟の意向を表明するなど、性格が変わってきている。

 以上のような中国と米国の陣形配置は、かつての米ソ2大陣営の対立構造とはかなり異なっている。第一に、イデオロギーに基づく結集というよりは、国益に基づく集合であり、それぞれの凝縮力はそれほど強固でない。民主主義と権威主義の対立という図式もあるが、境界線は曖昧だ。第二に、グローバル経済の時代を反映して、経済活動では貿易と投資の相互乗り入れが活発に行われている。デカップリング、ブロック化を過大にみるべきではない。

 

◆米中経済分断の進行と限界

 トランプ政権が発動した米中関税合戦は、バイデン政権下でも継続しているが、ここにきて高インフレ対策として見直しに着手する動きが出ている。ただし中間選挙等の政治情勢に規定され、具体化には至っていない。

 他方、軍事利用に直結する情報通信関連のハイテク覇権争いは一段と激化しつつある。トランプ政権は、中国最大の通信機器メーカーであるファーウエイを標的とし、米国からの半導体など中核部品の供給と完成品の調達を厳しく規制した。中国側は半導体の自給化を進めたが、高機能品の代替は進まず、ファーウエイは事業基盤を海外から国内にシフトせざるをえなくなった。

さらにバイデン政権は、人工知能やスーパーコンピューターなどの開発に要する先端半導体、製造装置、技術者等が中国へ流出しないように全般的に規制を強化した。日本、オランダなど、半導体製造装置の有力メーカーを擁する国家にも同調を要請している。

こうした措置によって中国の先端半導体開発は遅れをとるであろうが、それが中国の「製造強国」化を大きく制約するとは考えられない。中国が技術開発を推進する潜在力は非常に大きい。たとえば、文部科学省科学技術・学術政策研究所が最近公表した国別科学技術指標によれば、中国の科学技術論文は量的にも質的にも米国を抜いて首位に立っている(ちなみに日本は10位以下に沈んでいる、日経新聞8月10日)。毎年卒業する理工系学生数は400万人規模という。

中国が米国と鎬を削る分野はいくつもある。宇宙開発では中国独自の宇宙ステーションが完成に近づきつつあり、次世代高速通信(6G)の中核技術の特許出願数では中国が米国を上回っている。自動運転技術では米国が中国を一歩リードしているが、その差はわずかだ。

中国の経済力の大きさが、米国による中国抑制策を限界づけている。中国の貿易規模は2013年以降、米国を抜いて世界最大であり、各国とも中国への依存度は高い。米国にしても、関税合戦にもかかわらず、中国からの輸入は2018年1~9月と2022年1~9月を比較すると、国別比率では21%から17%へと低下したものの、絶対額では増加しており、依然として最大の輸入相手国であることに変わりはない。中国の比率低下の穴を埋めたのはベトナムをはじめとする東南アジア諸国であるが、そこへは中国の輸出が伸びており、東南アジア経由で対米輸出ルートを築いた可能性もある。中国への対抗を意図したIPEFにしても、そのメンバー国のすべてで中国は米国を凌ぐ貿易相手国となっている。

覇権争いの主戦場である半導体をみても、米国企業が中国市場から撤退するわけではない。11月に上海で開催された中国国際輸入博覧会には、クアルコム、AMD、インテル、TI等の有力メーカーが規制対象外の半導体売り込みを狙って参加をしている。製造装置メーカー、ソフトウエア大手も同様だ。

 

◆日本経済の中国依存度の深化

 2021年、中国のGDPは日本の3.6倍、貿易規模は4倍に達している。米中対立の狭間にあって、軍事的に米国に依存する日本は、経済的には長期的に中国への依存度を深めている(以下は拙稿「2010年代における日中経済関係の深化」『中央学院大学現代教養論叢』4巻1号による)。2000年から2019年にかけて、日本の貿易相手国として米国と中国の比率がどう変化したかをたどってみると、輸出では米国が29.7%から19.8%へと減少する一方、中国は6.3%から19.1%へと大きく上昇した。香港を含めると23.8%となり、米国を上回る。輸入では米国が19.0%から11.0%へと低下する一方、中国は14.5%から23.5%へと増加した。

 注目すべきは中国からみた日本の比率の変化だ。同じ期間に輸出では16.7%から5.7%へ、輸入では18.4%から8.3%へと日本の地位は低下している。かつては中国の対日依存度が大きかったが、今や日本の対中依存度が上昇する反面、中国からみた日本の存在感は大幅に下がっているのだ。

 品目別にみると、中国依存度の上昇はさらに明らかになる。輸出品の中分類上位10品目では、中国比率30%以上は2010年の2品目が2019年に4品目(半導体等製造装置、プラスチック等)へと増加した。輸入品では2019年の中分類計38品目のうち中国比率70%以上が2品目(通信機、電算機類)、50~69%が7品目もある。食料品輸入に占める中国の割合もきわめて高い。野菜、加工魚の50%以上が中国産だ。肥料も50%以上を中国から輸入しており、コメの生産に欠かせないリン酸アンモニウムはほぼ全量中国が供給している(日経新聞10月20日)。仮に台湾有事などで日中貿易が途絶するとすれば、その打撃は計り知れない。2022年の中国のゼロコロナ政策程度でも日本が受けた影響は大きかった。

 日本企業の進出先としての中国の位置もきわめて重要だ。製造業の直接投資残高を国別にみると、2019年時点で全世界80兆円のうち、米国20兆円、中国9兆円であり、米国が中国の2倍以上ある。しかし、投資収益をみると2019年の場合、中国1.6兆円、米国0.9兆円となり、中国が米国を上回る。自動車と電気機器産業がその主要部分を占めている。

 このような日本経済の中国依存度の深まりをみるならば、米中対立の構図のなかで米国側につき、中国との軍事的緊張を高め、経済的に断絶する選択(ゼロチャイナ)は考えられない。中国が対日牽制策として、日本が不可欠とする品目の供給を規制してきた場合、日本側が負うべきコストは甚大なものとなる。経済安全保障政策(サプライチェーンの貼替え)ですべてをカバーできるべくもない。そうである以上、長期に渡る米中覇権争いのなかで、中国との軍拡競争に陥ることなく外交力を発揮し、東アジア規模での総合安全保障構想を打ち出していくことが求められているといえよう。    (『現代の理論』2023年冬号)

高金利への移行が経済破綻を招く

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公開日:2022年12月06日(火)15:48
  • 金利引上げの連鎖 

 新型コロナによる経済難への対策として各国が財政・金融政策を通じて救済資金を潤沢に供給した結果、世界中に過剰資金が形成され、株価・不動産価格が上昇する一方、政府・民間の債務が膨張することになった。過剰資金の存在を背景に、コロナからの回復過程における需要と供給の不均衡、エネルギー資源と食料の価格高騰、それにロシアのウクライナ侵攻が加わり、インフレの波が世界を襲っている。

 迫りくるインフレに対して、米国FRBを先頭に、各国中央銀行は相次ぐ金利引上げで対処しており、引上げ回数は2022年9月までにのべ160回に達したという。金利引上げの影響で、4月から9月にかけて、世界の株式時価総額は24兆ドル(減少率22%)、債券残高は20兆ドル(14%)、合計44兆ドル減少した。これは世界GDPの半分に達する空前の規模だ(日経新聞10月2日)。

 低金利から高金利への転換は、過剰な債務を抱えた国家、企業、家計の破綻を招かざるをえない。その本格的発現は2023年になってからと見込まれるが、9月から11月にかけて発生した二つのショックはその先駆けといえる。

 

  • 二つのショック

 一つは9月にイギリスで生じたトラスショックだ。ジョンソン政権から交代したトラス政権は、エネルギー高対策として半年で600億ポンド(9.3兆円)の財政出動、総額450億ポンド(7兆円)と推計される50年ぶりの大型減税を打ち出した。その財源は国債発行しかない。しかし、イングランド銀行はインフレ対策として金利引上げ、国債売却を進めており、これに逆行する財政膨張は金融市場の混乱を招き、長期金利の高騰(国債価格急落)、ポンド暴落を引き起こした。緊急事態に直面してイングランド銀行は売却方針から一転して国債の無制限買入れに踏み切り、ひとまず混乱は収束したが、トラス政権は史上最短の

在任期間で崩壊した。危機の要因には、年金基金の破綻懸念があった。年金基金は低金利下で利益を出すためにリスクのある資産運用を行っており、金利急騰・国債暴落で資金繰りがつかなくなるという事態が進行した。MMT(現代貨幣理論)の破綻がここに現れたといえる。

 もう一つは、11月に発生した米国のFTXショックだ。仮想通貨(暗号資産)交換業大手のFTXトレーディングは、杜撰な経営実態が明らかになり、資金繰りに行き詰まって破産に至った。負債総額は現時点で不明だが 100~500億ドル規模と推定されている。これは

仮想通貨業界で過去最大の経営破綻という。担当弁護士は「米国の企業経営史上、最も突然で困難な破綻」と称した(日経新聞11月24日)。FTXには有力なベンチャーキャピタルが出資しており、ソフトバンクもその一つだ。全世界に100万人以上の顧客がいるとされ、影響は仮想通貨業界にとどまらず、金融市場全体に拡大する可能性がある。これも、低金利下で膨らんだバブルが、高金利への移行に伴って崩壊した一例だろう。

 

  • 日銀金融政策の転換が危機の端緒

 日本はどうなのか。日銀はイールドカーブ・コントロール(YCC)という低金利政策を2016年9月から6年も続けているが、すでに消費者物価は今秋連続して目標の2%を超え、10月には3.6%に達した。エネルギー、食料等の輸入品の高騰と日米の金利差拡大による円安が物価上昇の二大要因であり、この対策としての利上げ圧力はかつてなく高まっている。すでに住宅ローン金利は上がり始めている。

 日銀は、金利を引き上げた場合、新規国債発行の困難、既発国債の価格下落による日銀・民間銀行・保険会社・年金基金等の財務内容の悪化が生じることを懸念して、政策転換ができない。出るに出られない袋小路に追い込まれている。しかしいつまでも動かないわけにはいかず、近い将来、YCCを少し手直しして、若干の金利引上げに踏み切らざるをえないだろう。そのタイミングは最も早ければ2023年4月、黒田総裁が次の総裁に交代する時点と考えられる。

その時何が起きるのか。よほどうまく切り替えなければ、投機的な円・国債の売り浴びせが生じ、債券と為替の急落、さらには株式市場の混乱が起こりうる。日銀には当座預金付利が保有国債からの受取利子を上回る逆ザヤが生じうる。また国債価格の下落は日銀・民間銀行・保険会社の資産構成を悪化させるだろう。日本財政と円への信認が低下し、資本の海外逃避によって円安が一段と進行、輸入インフレが激化する可能性がある。

 円安の度合いは、経常収支の見通しにかかっている。経常収支黒字の存在が、巨額債務を抱える日本財政と日本円に対する信頼をこれまでつなぎ止めてきた。しかし、日本経済の輸出力は低下しつつあり、この先貿易赤字の拡大が所得収支の黒字(海外投資収益の還流)をもってしてもカバーしきれなくなれば、実力の低下した日本経済に厳しい試練が訪れるかもしれない。経常収支黒字を維持するために、長期的にエネルギーと食料の自給度を高めていくことが必要だろう。             (Political Economy, No.226、2022年12月1日)

 

国際課税ニュース(2022年12月1日)  国連総会、グローバルな課税ルールを国連のもとに策定する決議を採択

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公開日:2022年12月01日(木)11:21

 TAX JUSTICE NETWORKの2022年11月23日付の記事によれば、国連総会は、国連にグローバル税制の創設に向けて主導権を発揮することを義務づける決議を全会一致で採択した。米国は決議内容をあいまいにする修正を試みたものの、失敗に終わった。

国際課税のルール形成では、これまでOECD租税委員会が仕切り役を担ってきたが、これは先進国優位の方式であるとして、途上国やNGOからの批判を受けていた。この決議により、グローバル企業が先進国政府を通じて企業寄りのルール形成に影響力を行使する回路が縮小される可能性がある。

 今後は、多国籍企業や超富裕層による課税回避策の濫用に終止符を打つために、グローバルな税制を全面的に見直す国連租税条約の制定に向けて、政府間の協議が始まることになる。その成果が結実するにはかなり長期間の交渉プロセスが想定されるが、将来的にはグローバル課税機関の創設が見込まれており、グローバル・ガバナンスの新時代の展望が開けてきたといえる。

世界のNGO紹介シリーズ 第1回 ICRICT

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公開日:2022年11月03日(木)09:18

世界のNGO紹介シリーズ 第1回

ICRICT(The Independent Commission for the Reform of International Corporate Taxation;

         国際企業課税改革独立委員会) https//:www.icrict.com

 

◆設立趣旨:グローバル時代における公正な企業課税(多国籍企業課税)の実現に向けて提言を行う国際NGO。2015年設立。

◆主な委員:ジョセフ・スティグリッツ(コロンビア大学教授、ノーベル経済学賞受賞)

       2022年共同議長

       『世界を不幸にしたグローバリズムの正体』徳間書店、2002年

       『プログレッシブ・キャピタリズム』東洋経済新報社、2020年

      ジャティ・ゴーシュ(マサチューセッツ大学教授)、2022年共同議長

      ホセ・アントニオ・オカンポ(元国連事務次長、コロンビア大学教授)前議長

      トマ・ピケティ(社会科学高等研究院EHESS教授、パリ経済学院教授)

       『21世紀の資本』みすず書房、2014年

      ガブリエル・ズックマン(カリフォルニア大学バークレイ校教授)

       『失われた国家の富:タックスヘイブンの経済学』NTT出版、2015年

       『つくられた格差:不平等税制が生んだ所得の不平等』(エマニュエル・サエズとの共著)光文社、2020年

◆主な報告書と概要

 *An Emergency Tax Plan to Confront the Inflation Crisis, September 2022

  [はじめに]

  ・世界経済はコロナ禍でエネルギー、食料等の価格高騰、成長率の低下、財政赤字と債

務の拡大といった危機に直面している。その負担は、特に脆弱な貧困層、貧困国に加

重されている。

・一方、巨大多国籍企業や富裕層は巧妙に課税を逃れて富を蓄積しており、課税を強化することが求められている。

  [超過利潤税]

・世界経済がインフレに進むなかで、エネルギー、食料、製薬、金融等の価格支配力をもつ独占的多国籍企業は、超過利潤を取得している。それに対する課税は国際協調のもとで進めるべきであるが、その交渉は遅れている。

・我々は、そうした交渉の妥結を待つことなく、緊急に超過利潤税を実施すべきであると考える。

   [グローバル課税交渉は前進しているのか]

  ・多国籍企業の課税逃れは年間2400~6000億ドルに達し、特に中低所得国の喪失額が大きい。

  ・2021年10月に合意された2本柱のグローバル企業課税ルールは、従来の方式の転換という意義をもつとはいえ、きわめて不十分な内容だ。グローバル最低税率15%では、増収が少ないばかりか、むしろそれが国際標準とされ、法人税依存度の高い途上国にとってマイナスに作用する恐れがある。

  ・合意が前進しているかといえば、EUと米国内に抵抗があり、実施が遅れている。それゆえ、各国は自国でできる公正な課税を実施すべきだ。2本柱の多国間合意が実行段階に入るまでは、それに代わる1国ベースの措置をとるべきである。

  [第1の柱の代替案]

  ・第1の柱(課税権の配分)は、物理的拠点のない市場国にも一定の課税権を配分する考えを打ち出した。しかし、対象企業が総売上高200億ユーロ以上、売上高利益率10%以上の巨大企業(およそ140社)に限定され、しかも課税権の配分は10%を超える超過利潤のうちの25%に限られ、利潤の大部分は従来の方式で課税される。新方式での税収はせいぜい60~150億ドルだろう。

  ・新方式での課税は多国籍企業の総利潤に適用するユニタリータックスとすべきである。その場合、国別配分の基準は売上高のみでなく、従業者数、物理的資産も指標に加える必要がある。現行案は、小規模、複雑性、不平等などの点で是認できない。加えて、各国議会での承認のハードルは高い。

  ・次のような代替案が考えられる。

  1. 累進的デジタルサービス税。すでにいくつかの国で採用されており、新方式実施に際しては廃止されることになるが、それまでは活用できる。
  2. サービス支払の源泉徴収課税。自動的デジタルサービスにも源泉徴収はできる。
  3. サービスの純利益への課税。
  4. 無形資産を利用した所得移転への課税。
  5. 租税政策と租税条約の修正。

  [第2の柱について]

  ・第2の柱であるグローバル最低税率は、法人税切下げ競争に歯止めをかける意義をもつが、実効税率15%に満たない場合の追加課税は多国籍企業本国で徴収され、価値が創出される途上国は利益を得られない可能性がある。途上国は代替策を検討する必要がある。

  ・代替ミニマム税は利益に代わって売上高や資産を対象に課税する方式であり、脱税や租税回避を抑止するうえで有効性をもつ。

  ・既存の優遇税制の見直しも有効であり、多国籍企業誘致のための税制優遇は、国内企業と同等とするように改められるべきである。

  [だれがルールを決めるのか]

  ・多国籍企業課税ルールの決定は、公平性、透明性、説明責任、安定性等の原則が尊重されるべきである。OECD/G20は途上国を含めた「包摂的枠組み」へと拡大してきたが、途上国の参加は行動指針が合意された後であり、途上国の意向は軽視されている。国際課税のルール策定は国連のもとでの国際条約交渉へと発展させるべきである。また、国連にグローバル租税機構を創設する議論も進めるべきである。

  [結論]

    ・今回の合意は先進国に有利で途上国に不利なものだが、より包括的な解決策への足掛かりになりうる。この合意が実施されないようであれば、各国は独自の代替案を導入し、真に公正なグローバル税制に向けて圧力をかけるべきである。途上国の経済危機に立ち向かうためには、公正なグローバル・ガバナンスが必要とされている。

 

  *It is Time for a Global Asset Registry to Tackle Hidden Wealth, April 2022

  コロナ危機とウクライナ戦争、世界的な物価上昇のなかで、オフショアに隠された富への課税が急務となっている。グローバル資産台帳という一種のデータベースの構築が求められている。その特徴は第一に、富のあらゆる形態を包括すること、第二に、資産の真の所有者を特定すること、第三に、情報が公開されることである。1国レベルでの資産台帳はEU、米英などで整備が進んでいる。1国単位の資産台帳は、EUのような地域レベルの台帳へと発展させる必要がある。

 

 *Who Owns What?  Making UK Wealth Ownership More Transparent through a National Asset Register, December 2020

   「グローバル資産台帳」は世界的な富の分布、不正な資金移動を把握し、効果的な課税策を講じる有効なツールとなる。それは各国の資産台帳を統合して作成される。この報告では、イギリスにおける資産台帳創出の試みとして、各種の登記情報、公式記録などを総合し、不動産・無形資産・金融資産等の資産状況の概要を検討している。

   

 *International Corporate Tax Reform, October 2019

    公正で包括的な多国籍企業課税はユニタリータックスでなければならない。現在OECDが提起している案は、それにはほど遠い。国際最低税率は25%とすべきである。現在の案では、通常の利益への課税は従来通りであるし、超過利益の課税権配分は売上のみを基準としている。

   また、今回の合意は終着点ではなく、さらなる改革への入口である。それはOECDでなく、国連システムのもとでなされなければならない。

 

 *A Roadmap for a Global Asset Registry, March 2019

   世界的に貧富の格差が拡大するなかで、富裕層の富は巧妙に隠されている。各国の税務当局間の情報交換システムは近年整備されてきているので、そうした現存するデータを結合し、隠された富を表に出す「グローバル資産台帳」の設置を提案したい。

   ピケティ、ズックマンの提起を受けての提案。

 

 *The Fight against Tax Avoidance, January 2019

   多国籍企業は価値を生み出すところで税を納めず、低税率国に利益を移転している。OECDのBEPSプロジェクトは多国籍企業の国別報告書作成などの成果をあげたが、子会社間の「価格移転システム」を利用した税逃れは放置している。これを防ぐには、多国籍企業グループ全体に対するユニタリータックスを導入するべきである。同時に、グローバル最低実効税率20~25%を設定すべきである。

 

 *A Roadmap to Improve Rules for Taxing Multinationals, February 2018

   BEPSプロジェクトによる多国籍企業の国別報告書は有益であり、その一般公開が望まれる。多国籍企業課税では、従来の子会社ごとの課税方式(独立企業原則)を捨て、単一統合課税(ユニタリータックス)に移行すべきであり、課税ベースの国別配分は資産、雇用、売上等の要素を組み合わせた公式を用いることが望ましい。長期目標がそうであるとして、短期的にはEUの共通連結法人税(CCCTB)を採用することを要請する。また多国籍企業課税問題は先進国主導のOECDでなく、国連で扱うべきである。

 

 *Four Ways to Tackle International Tax Competition, November 2016

  国際課税問題の解決のためには、グローバルな最低税率の設定、タックスヘイブンなど税逃れの仕組みの廃絶、海外企業への優遇税制廃止、市民への企業課税情報の公開という4項目を実現していく必要がある。

世界首位を走るトヨタの未来は安泰か?

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公開日:2022年08月28日(日)17:29

◆コロナ禍で他社を引き離す

 2020年から続く新型コロナの世界的大流行によって世界の自動車メーカーは苦戦を余儀なくされているが、トヨタ自動車は2021年の世界新車販売台数1135万台(ダイハツ、日野、スバルを含む)、前年比9%増を達成し、2年連続で世界首位の座を維持した。2位のフォルクスワーゲンが888万台(前年比5%減)、3位の日産・ルノー・三菱が768万台(前年比0%増)だったから、トヨタの強さは際立っている。

 米国市場でも2021年にトヨタはGMを抜いて販売台数首位に立った。米国市場で海外メーカーがトップになるのは史上初めてのことだ。2022年に入ってもトヨタは強さを維持し、上半期(1~6月)の世界販売台数は513万台と前年同期より6%減少したものの、2位フォルクスワーゲンが387万台(22%減)と大きく落ち込んだため、3年連続で世界首位を保つことになった。

 各社が苦戦した要因は、コロナ禍で工場の操業停止、サプライチェーンの寸断が生じたためだが、なかでもデジタル化の波のなかで半導体が圧倒的に不足したことが大きかった。トヨタは競合他社に比べて半導体調達難の影響をある程度回避できたように思われる。

 表1によって、国内大手8社の2021年度(2021年4月~2022年3月)における生産・販売実績をみよう。各社の世界生産台数では、トヨタ、スズキ、ダイハツ、三菱が前年度比プラス、ホンダ、日産、マツダ、スバルが前年度比マイナスを記録した。世界販売台数も同様の傾向であり、トヨタ、スズキ、三菱がプラス、他の5社がマイナスだった。また国内生産台数は三菱以外はトヨタを含めて7社がマイナスとなった。

表1 自動車8社の生産・販売台数(2021年度)

     
 

世界生産

 

国内生産

 

世界販売

 

国内生産

 

(千台)

(%)

(千台)

(%)

(千台)

(%)

比率(%)

トヨタ自動車

8,570

4.7

2,761

-5.4

9,512

4.7

32.2

ホンダ

4,143

-8.6

634

-7.7

4,363

-6.3

15.3

日産自動車

3,390

-10.7

446

-13.8

3,821

-9.0

13.2

スズキ

2,822

6.4

840

-9.7

2,707

5.3

29.8

ダイハツ工業

1,518

8.8

841

-8.4

907

-1.7

55.4

三菱自動車

1,025

25.9

421

14.7

937

16.9

41.1

マツダ

1,024

-12.6

696

-6.8

1,251

-2.8

68.0

スバル

727

-10.3

455

-13.3

812

-11.3

62.6

出所:「朝日新聞」2022年4月28日

         

注:生産と販売の%は前年度比増減率

       

 

 トヨタ、ホンダ、日産の上位3社を比べると、世界生産と世界販売でトヨタのプラス、ホンダ、日産のマイナスが対照的であり、トヨタの一人勝ちといった様相だった。ホンダと日産は国内生産比率がきわめて低いことも、トヨタとの違いを示している。

 

◆空前の好業績はさらに続くのか

 表2によれば、2022年3月期(2021年4月~22年3月)のトヨタは営業収益、純利益とも空前の好業績だった。営業収益は31兆3800億円、純利益は2兆8500億円とかつてない規模に達した。販売台数は2020年3月期の水準に達していないにもかかわらず、利益を大きく伸ばすことができたのは、利幅の多い高級車の売上が増加したためだろう。

表2 トヨタの主要経営指標

     
 

2019年4月

2020年4月

2021年4月

2022年4月

 

~20年3月

~21年3月

~22年3月

~23年3月

営業収益(億円)

298,665

272,146

313,795

345,000

純利益(億円)

20,361

22,453

28,501

23,600

販売台数(万台)

896

765

823

885

従業員数(人)

361,907

366,283

372,817

 

平均臨時雇用人員(人)

86,596

80,009

87,120

 

税金費用(億円)

6,818

6,500

11,159

 

実際負担税率(%)

24.4

22.2

28.0

 

出所:トヨタ自動車「有価証券報告書」2022年3月期他

 

注:2022年4月~23年3月は2022年8月時点での決算見通し

 

 

 表3によって国内他社と比較してみると、売上高、純利益はスバルを除いて各社とも前年度に比べて増加しているが、増加率はトヨタが優勢であり、トヨタとホンダ以下各社との差が開いたことが明らかだ。なかでも純利益の増加率はトヨタが際立っている。

 利益増加の要因について、トヨタは販売台数の拡大とともに為替変動の影響を指摘し、資材高騰というマイナス要因をカバーした点をあげている。しかし、2023年3月期の業績見通しでは、最近の世界的な物価上昇、特に鉄鋼、樹脂原料等の原材料費膨張が円安というプラス要因を上回り、利益は落ち込むとみている。コロナ禍によるサプライチェーンの混乱は在庫を圧縮するトヨタ生産方式に打撃を与えており、原材料費の高騰はトヨタを支える部品企業群を苦境に追い込むだろう。

 

 

表3 自動車7社の経営実績(2022年3月期)

 
 

売上高

 

純利益

 
 

(億円)

(%)

(億円)

(%)

トヨタ自動車

313,795

15.3

28,501

26.9

ホンダ

145,526

10.5

7.070

7.6

日産自動車

84,245

7.1

2,155

ー

スズキ

35,683

12.3

1,603

9.5

マツダ

31,203

8.3

815

ー

スバル

27,445

-3.0

700

-8.5

三菱自動車

20,389

40.1

740

ー

出所:「朝日新聞」2022年5月14日

   

注:%は前年度比増減率。純利益の―は前年度赤字のため

  算出せず。

     

 

一方、表4によって地域別の事業実績をみると、生産台数・販売台数ともに日本はマイナス、海外はプラスだった。海外ではアジア、その他(中南米、オセアニア、アフリカ、中東)の伸びが北米、欧州を大幅に上回った。その結果、生産台数はアジアが北米に接近するまでに地位をあげた。営業収益では、全地域でプラスを記録したが、日本、北米は相対的にそれ以外の地域より低かった。営業利益はどの地域もかなりの伸びをみせたが、アジアが54.2%増の6724億円に達し、北米の5658億円を上回ったことが注目される。

表4 トヨタの地域別事業実績(2021年4月~2022年3月)

     
 

生産台数

 

販売台数

 

営業収益

 

営業利益

 
 

(万台)

前期比(%)

(万台)

前期比(%)

(億円)

前期比(%)

(億円)(億利益

前期比(%)

日本

374

-5.3

192

-9.5

159,914

7.0

14,234

23.9

北米

175

6.7

239

3.5

111,665

17.6

5,658

41.0

欧州

71

10.1

102

6.0

38,678

23.4

1,630

50.9

アジア

150

47.6

154

26.3

65,306

29.4

6,724

54.2

その他

46

51.3

135

31.7

29,282

56.3

2,382

298.0

合計

816

8.0

823

7.6

313,795

15.3

29,957

36.3

出所:トヨタ自動車「有価証券報告書」2022年3月期

     

 

ちなみに国別の販売台数を示せば、米国233万台、中国194万台が飛び抜けて多く、それに続くインドネシア、タイ、カナダ、オーストラリアなど20万台水準の国々と差をつけていた。

 

◆電気自動車への転換は進むのか

 世界首位の座にあるトヨタにとって、脱炭素革命への対応、ガソリン車から電気自動車へのシフトは簡単ではない。EU、中国、米国など世界の主要自動車市場では、2050年のカーボンニュートラルに向けて、2030年代にはガソリン車を禁止しようとしている。主要な自動車メーカーは一斉に電気自動車へのシフトを進めている。

 しかし、トヨタはこれまで電気自動車生産には消極的で、ハイブリッド車を広義の電動車と位置づけつつ、内燃機関を維持した多様な車種の開発を進めてきた。表5はトヨタが公表している電動車の生産実績だが、ハイブリッド車が大半であり、これは世界標準では「排ガスゼロ車」とは認められていない。トヨタがハイブリッド車の成功体験に囚われているうちに、世界では電気自動車の市場が急速に拡大しており、2021年の世界販売台数450万台が2022年には700万台へと急増する見込みだ。

表5 トヨタの電動車販売実績

         
 

2019

 

2020

 

2021

   
 

(台)

(%)

(台)

(%)

(台)

(%)

 

HEV

1,860,188

96.7

1,902,621

97.1

2,482,236

94.7

 

MHEV

4,602

0.2

3,320

0.2

7,482

0.3

 

PHEV

56,524

2.9

48,513

2.5

111,882

4.3

 

FCEV

2,494

0.1

1,770

0.1

5,918

0.2

 

BEV

0

0

3,346

0.2

14,407

0.5

 

合計

1,923,808

100.0

1,959,570

100.0

2,621,925

100.0

 

出所:トヨタ自動車ウエブサイト>企業情報>会社概要>販売・生産・輸出実績

 

 電気自動車のメーカーは、表6に示されるようにテスラを先頭に、上海汽車集団、BYDなどの中国勢がこれに続き、トヨタははるか後方の21位と出遅れている。またトヨタは、ガソリン車禁止政策を緩和させようと政治工作を行い、脱炭素革命を妨害しているとして、世界の環境運動団体から批判されている。有力な環境NGOのグリーンピースは、2021年11月、世界の自動車大手10社の気候変動対策でトヨタは最下位と評価した。また、2022年6月のトヨタ株主総会では、デンマークの年金基金から、トヨタの脱炭素の姿勢に対する質問状が提出された。

表6 電気自動車(EV)の会社別販売台数

会社名

販売台数(万台)

EV比率

 

2021年

2022年上期

(%)

テスラ

93.6

56.4

100

上海汽車集団

59.6

31.0

21

フォルクスワーゲン

45.2

21.7

5

BYD

32.0

32.4

43

日産・ルノー・三菱

24.8

13.3

3

現代自動車

22.3

16.9

3

ステランティス

18.2

11.6

3

長城汽車

13.5

 

11

広州汽車集団

12.0

10.0

29

浙江吉利集団

11.0

12.3

8

BMW

11.0

 

4

トヨタ自動車

1.4

 

0.1

出所:「日本経済新聞」2022年3月18日、7月28日

注:EV比率は2021年のデータ

   

 

こうした事態に対して、2021年12月、トヨタは2030年の電気自動車世界販売目標を200万台から350万台に引き上げ、4兆円(うち車載電池2兆円)を投資すると発表した。2022年5月には、初の量産型電気自動車bZ4Xを発売した。とはいえ、トヨタはホンダのように電気自動車一辺倒になるのでなく、水素エンジン車など、エンジン技術を残しつつ燃料の脱炭素化を進める戦略を堅持している。しかし、膨大な資金を要する電気自動車、水素エンジン車、燃料電池などの開発を並行して進めていけるのか。またこれまで協力してきた多数の部品メーカーを円滑に再編成していけるのか。自動車産業全体の大転換を前にして、世界王者トヨタの前途はかなり厳しいのではないだろうか。(2022年9月)

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https://youtu.be/eD_pS429Xno


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