インドネシアで、アムステルダムで「#Neverstoppushing」

遠野はるひ(横浜アクショリサーチ)

インドネシア・ジャカルタでPDK労組の女性労働者たちがミズノに抗議(10/16)

アムステルダム・マラソン(10/16)で市民がPDK労組に連帯してミズノに抗議

 10月13日、ミズノはインドネシアでのPDK労組との交渉に現れなかった。

パルナブグループが書いた8月19日のPDK労組との交渉議事録を根拠にして交渉はすでに終了しているというのがその理由だったが、次回の交渉にふれているPDK労組が書いた議事録には言及がなかった。

ミズノが交渉のテーブルにつかないと知ったPDK労組は、10月12日夜に抗議声明を発表し、その中で以下のように記載した。

「PDK労組は、ミズノがPDK 社1300人労働者解雇問題解決に向けた2016年10月13日の労働側との会合拒否を遺憾に思う。会合に応じないミズノの態度は、問題解決に向けて責任をとるつもりのないことを示している。『われわれはとてもがっかりしている。ミズノは公平、公正、透明性といった原則をもった企業だと思っていたのだから』とPDK労組のココム・コマラワティ委員長は語った。」「ミズノの掲げる公正、公平、透明性といった理念や原則は単なるお題目にすぎないことが明らかになった。これらの目標は、日々の行動のなかで否定されているからだ。何千人もの女性労働者は、何の補償もない解雇というひどい状況に対して、正当な権利を要求している。」「 PDK労組はミズノに対して PDK社の労働者1300人の解雇問題の解決に全面的に責任をとり、ほかのところに責任をなすりつける見苦しいふるまいをしないように要求してきた。われわれは PDK社の労働者の正当な権利が実現するまで、闘いをやめないであろう。」

 

インドネシア・タングラン市でPDK労組の女性労働者たちがミズノに抗議

 

インドネシア・ジャカルタでPDK労組の女性労働者たちがミズノに抗議

 

この言葉のとおり、10月16日、インドネシアでは、3都市―ジャカルタ、タンゲラン、メダンで、総数200人の女性労働者が抗議行動をおこなった。ミズノがスポンサーになっているアムステルダムマラソンの路上でも、コースのあちらこちらに、プラカードを手にした女性たちが出没した。

アムステルダム・マラソンで市民がPDK労組に連帯してミズノに抗議

 

日本での要請行動も含めた多数の写真が下記のウェブサイトで見ることができる。

https://drive.google.com/drive/folders/0B-878uqFOwIlYTRaSUVkamc5UWM?usp=sharing

ミズノのみなさん、私たちは国際連帯で「#Neverstoppushing」

レイバーネット日本ウェブサイト(2016年10月22日)からの転載
http://www.labornetjp.org/news/2016/mizunomarathon1016

 

ミズノのみなさん、私たちは「#Neverstoppushing」

遠野はるひ(横浜アクションリサーチ)

•公安に出迎えられて

昨日(2016年10月12日)、御茶ノ水にあるミズノ東京本社に向かう道で携帯電話が鳴った。「公安がたくさんいるよ!」一足先に到着した友人からだった。

レイバーネット日本のウェブで要請行動を知らせたので公安が自発的にきたのか、それとも11日にミズノに電話して、この国際キャンペーンを知らせたためなのか。11日の夕方、ミズノに①13日の交渉に参加するかどうか、②私たちの要請文を受け取ってほしいという、2点を伝えるために連絡していたのだ。というのは、10月13日、インドネシアで予定されている交渉にミズノが参加すれば、日本からスタートして16日のミズノがスポンサーとなるアムステルダムマラソンまでの国際キャンペーンは、すべて中止することになっていたからだ。返事は、「この問題は大きくて法務部だけでは決められないので、取締役会で決める」とのことだったため、PDK労組・CCC(クリーン・クローズ・キャンペーン)に相談して、この日の要請行動を実施することに決めた。

本社前で最初に出迎えてくれたのは黒いリクルートスーツに身を包んだ3人の公安らしき若い男性たち。「公安は、10人以上いるね」誰かが耳元でささやいた。16人の市民による小さな抗議行動に同じ数だけの公安とは。インドネシアで出会ったPDK労組の女性たちは、ストライキ中に警察官から催涙ガスを浴びせられ暴力を受けたと語った。過酷な労働条件に我慢ならず立ち上がった女性たちへの警官隊導入、彼女たちを支援する市民を監視する日本の公安。「人権」とか「正義」は「いったいどこにあるの???」

•日本からスタートしたキャンペーン

キャンペーンスタート予定の16時が近づいてきた。国際労働問題に関心をよせてきた仲間たちも次々と集まってくる。レイバーネットのウェブをみて駆けつけてくれた人たちもいた。私たちはあわててマリオの扮装に着替えた。リオオリンピックの閉会式に間に合うようにと、安倍首相がマリオになって日本からリオの会場に駆けつけた映像は、まだみなさんの記憶に新しいのではないかと思う。安倍マリオは世界にもインパクトを与えたらしく、安倍マリオからミズノに解決をお願いしてもらおうという国際キャンペーンのアィデアで、マリオのコスプレを使うことになったのだ。

本社前で横断幕を2枚広げる。「ミズノはインドネシアの労働争議を解決せよ MIZUNO, PAY THE WORKERS WHO MADE YOUR SHOES IN INDONESIA」、「ミズノ、私たちは抗議をやめない!MIZUNO、WE WILL  #NEVERSTOPPUSHING」、これらの文言も世界共通のものだ。本社前は人通りが少ないので、私たちはミズノ本社の社員たちとギャラリーの公安に向かって、キャンペーンのスローガン、「#Neverstoppushing」を繰り返した。意訳すると、「ミズノ、私たちは抗議をやめない!」、「解決まで挑戦をし続ける」だろうか。

約束通り玄関間にでてきてくれたミズノのスタッフに向かって、参加者が要請文(→PDF[日・英])を読み上げた後、手渡した。要請文の内容は7月に世界の各団体からミズノに送られたものを少し変更したもので、ミズノのサプライチェーンで働いていたPDK労働者の要求―①未払い賃金の支払い、②退職金の支払い、③補償金の支払い―を支援者として要請するものだった。8月9日にPDK労組とパルナブグループの交渉がインドネシアでおこなわれたが、それに先立ちヨーロッパでメディアキャンペーンが繰り広げられ、その一環として要請文が世界各地からミズノに送られたのだ。横浜アクションリサーチもPDK労組からの連絡に応え、7月19日に要請文を送ったが、ミズノからの返事がなかったこともあり、差出人を「PDK労働者を支援する日本の市民・労働者」にして、再度、この日に提出することにしたのだ。

その後、日本の消費者に訴えようと、靖国通りに面したミズノの店舗へと移動した。残念なことに店舗は休業日で開いていなかったが、マリオのコスプレに驚きながら、道行く人はビラを受け取ってくれた。

この記事を読んでくださるミズノのみなさん、私たちはこの問題が解決するまで、「#Neverstoppushing」

レイバーネット日本ウェブサイト(2016年10月13日)からの転載
http://www.labornetjp.org/news/2016/mizunotokyo1012

リオ・オリンピックに現れたマリオと一緒に要請行動

リオ・オリンピックに現れた
マリオと一緒に要請行動

ミズノ東京本社

ミズノ東京本社

ミズノはインドネシアの労働争議を解決せよ

ミズノはインドネシアの
労働争議を解決せよ

対面の道路から監視中の公安

対面の道路から
監視中の公安

ミズノのスタッフの前で要請文を読み上げました

ミズノのスタッフの前で
要請文を読み上げました

ミズノショップの前でビラくばり

ミズノショップの前で
ビラくばり

 

ミズノはインドネシア労働争議を解決せよ! (動画)

https://youtu.be/7Q6tXF_PLN8

ミズノのインドネシア・サプライチェーン、PDK労組争議に支援を

遠野はるひ(横浜アクションリサーチ)

数日前にオランダに本拠地がある国際労働NGO,CCC(クリーン・クローズ・キャンペーン)から、インドネシアにおけるミズノのサプライチェーン、パルナブ・デゥカリャ社(PDK)の労働組合を支援する国際キャンぺーンを、急遽、実施することになったので、日本の団体にも参加してほしいという呼びかけがあった。横浜アクションリサーチは3年前からPDK労組と連絡していることもあり、この呼びかけに応え、10月12日16時から御茶ノ水にあるミズノ東京本社前で、レイバーネット国際部などの団体とともに要請行動をおこなうことにした。

●女性労働者1300人を解雇

ミズノが取引をしているパルナブ社のグループ企業・PDK社は、ジャカルタから車で1時間の工業都市・タングラン市で2013年12月まで操業し、アディダスやミズノの靴を製造していた。PDK社は2次下請けだったが、最大の取引先であるミズノから直接注文を受けることもあった。労働者のほとんどが女性で労働条件は過酷。ハイシーズンには納期にまにあわせるために5,6時間、時には9時間の残業をしいられる長時間労働で意識を失うなどの精神障害がおきることもあったが、賃金は最低賃金を下回る低さだった。2012年2月、女性たちが中心となってPDK労組を結成したが、PDK社は組合結成の翌日に女性委員長・ココム・コマラワティさんを解雇し、組合潰しをしようとした。おりしもインドネシアでは最低賃金のアップと非正規雇用の正規化をもとめて労働運動が勢いをつけていた頃だった。

この年の7月、PDK労組の2000人の組合員は、ココム委員長の解雇撤回と法定の最低賃金の要求など、労働条件の向上を求めてストライキに突入。会社は警察を導入し、催涙ガスを妊娠中の女性にも容赦なく浴びせ、7日間にわたるストライキを鎮圧。その後、労働者を脅迫し、組合を脱退するように強要したが、従わない1300人労働者を、違法ストライキをおこなったという理由で大量解雇した。解雇になった組合員たちはPDK社と同じような下請け企業に再就職をしながら、PDK労組に所属し闘争を継続している。彼女たちの要求は、2013年12月に会社が閉鎖になるまでの賃金、退職金、および不当解雇になったことにより生じた子どもの退学、住居の立ち退きなどの被害の補償などである。解雇から4年近くを経過した今も346人の女性たちが、親会社であるパルナブ社、発注元であるアディダスやミズノの責任を追及し、インドネシアに事務所がないミズノに代わり日本大使館への抗議行動を繰り返し行っている。

●国際労働団体が支援に乗り出す

国際労働NGOであるCCCは、ミズノのサプライチェーンであるこの争議への責任をとるように求めてミズノ本社へ連絡をとりはじめ、争議支援の国際キャンペーンを展開している。また、ミズノは2011年に産業別国際労働組織・インダストリオールと健全な労使関係を目指す国際枠組み協定(Global Framework Agreement)を他社に先駆けて結んだこともあり、インダストリオールもミズノにPDK労組の要求を尊重し交渉を行うように促している。このような国際的な動きもあり、ミズノは独自調査をスタートしたが、大量解雇は違法ストライキによるという立場をとり、具体的な解決行動には結びついていない。

昨年、G7の議長国であるドイツは、「G7エルマウ・サミット首脳宣言」の「責任あるサプライチェーン」の項目において、多国籍企業が劣悪な労働条件を是正する責任を、子会社のみならずサプライチェーンにまで負っていることを明記。来年のG20の議長国としても、この問題を取り上げる予定だと聞いている。また、今年のILO総会でもグローバル・サプライチェーンは議題となり討議が行われた。今年5月の伊勢・志摩サミットでも、この問題をとりあげるように国内外のNGOは日本政府に働きかけたが、残念ながら実現しなかった。

インドネシア現地では、8月9日にPDK労組が親会社であるパルナブ社と交渉を行い、労組側が要求額を下げたにもかかわらず何の進展もなかった。次回は10月13日に交渉を予定しているが、ミズノもインドネシアに来て交渉に同席するように国際キャンペーンは要請している。この要請を拒否した場合は、10月16日(日)にミズノがスポンサーとなっているアムステルダム・マラソンでの抗議行動を予定している。

ミズノは海外の子会社との間に良好な労使関係を築いている模範企業として、さまざまな場所で講演をおこなっている。そのミズノにサプライチェーンの労働問題として今や国際問題となっているPDK争議の積極的な解決を求めて、日本でも下記のようにミズノに交渉参加を要請するので、ぜひ、ご参加を!

日時:10月12日(水)16時から
場所:ミズノ東京本社前 
http://bb-building.net/tokyo/deta/839.html
(住所:千代田区神田小川町3-22 最寄駅JR御茶ノ水駅、千代田線新御茶ノ水駅)
★参加できる方は、横浜アクションリサーチ、遠野まで連絡をください。

レイバーネット日本ウェブサイト(2016年10月9日)からの転載
http://www.labornetjp.org/news/2016/1009mizuno

2016年2月9日
ミズノの108回の創立記念日に
日本大使館前で抗議行動①

日本大使館前で抗議行動②

演説するPDK労組のココム委員長

 

インドネシア大使館とミズノ本社へ要請

インドネシアPDK労組、ミズノとアディダスへキャンペーン
―1300人の大量解雇から5周年―

遠野はるひ(横浜アクションリサーチ)

ミズノブランドの靴を製造していたインドネシアのサプライチェーン・PDK社で、女性労働者たちが組合を結成し労働条件の向上のためにストライキを行った結果、2012年7月に1300人が大量解雇されたこと、日本でも2017年10月にミズノ東京本社前で要請行動を実施したことはすでに報告した。 

7月15日、突然、インドネシアのPDK労組の上部団体・GSBIよりメールが届いた。内容はPDK争議の5周年にあたる7月12日から18日まで、アディダスとミズノをターゲットに国内キャンペーンを実施しているので、海外でも共同要請文に署名し、キャンペーンに参加してほしいというものだった。最終日の18日には抗議行動を実施する予定だという。

2012年7月12日、2000人の労働者が労働条件の向上と不当解雇されたココム委員長の復職をもとめてストライキに突入。5日間にわたるストライキの終了後、7月18日に1300人が解雇されたが、現在も346人がPDK社と同様の下請け工場に再就職しながら、PDK労組に所属し闘いを続けている。PDK労組はこの女性たちとともに抗議行動を続け、ILOの結社の自由委員会にも提訴した。また、女性たちのネットワークを使い労働者自身でアディダスのサプライチェーンで働く労働者の実態調査もおこなっている。2016年11月には、ILOから勧告が出された。ILOはPDK労組の主張を認め、インドネシア政府にこのケースの調査をすることを要請している。

 

            5年間の怒りをこめて

7月18日の行動日、バスをチャーターしてタンゲラン市からジャカルタまで来たPDK労組員たちは支援者とともに、10時からドイツ大使館前でドイツ多国籍企業であるアディダスへ退職金を支払うように指導することをもとめ、続いてアディダスのジャカルタ事務所前で抗議行動を繰り広げた。

         ドイツ大使館前でのPDK労組

        アディダスジャカルタ事務所前で

午後からは労働省前でピケをはりILO勧告の実現を要求した。同日、解雇直後からPDK労組を支援していたクリーン・クローズ・キャンペーン(CCC)は、アディダスとミズノ宛に公開書簡を発表し、両社が今もパルナブグループをサプライチェーンとして使っていること、PDK労組員の生活の困窮、PDK社の組合潰しや違法な労働条件をとりあげ、ILO勧告を実現する責任を問うた。ミズノに対しては、この争議の調査を実施したにもかかわらず、PDK社はインドネシア労働法に違反していないと結論をだしたことへの疑問を呈した。

           労働省での要請行動

 

7月15日にキャンペーン参加の要請を受けた日本の私たちは、ミズノとインドネシア政府への共同要請文[インドネシア政府宛要請文PDF(日/英)ミズノ宛要請文PDF(日/英)]の署名団体・個人を募ったところ、2日間で6団体、32人の個人の署名が集まり、7月19日に5人でインドネシア大使館とミズノ東京本社に英文の要請文を届けた。インドネシア大使館では、政治部か経済部のどちらの部署が共同要請文を受け取るか決めていないので、とりあえず窓口で受けとることになった。ミズノ東京本社前では2人の管理職が待ち受けていたので、共同要請文を渡すとともにPDK労働者の現状とILO勧告の内容を説明して早期の解決をもとめた。この私たちのささやかな国際連帯へPDK労組のココム委員長から謝辞が届いた。

              インドネシア大使館前で

             ミズノ東京本社に要請行動

              ミズノにパンチ

ミズノからのキャンペーンへの応答は、7月20日、CCCの公開書簡への返事という形で発表され、ミズノは自分たちの対応は変わらないしILO勧告へはコメントする立場ではないと断言した。東京オリンピックが3年後にせまった今、サプライチェーンの問題はさらに大きくとりあげられるようになるだろう。

ミズノのみなさん、私たちはあきらめません!

レイバーネット日本ウェブサイト(2017年8月15日)から転載
http://www.labornetjp.org/news/2017/0815mizuno

写真:笠原真弓 小畑精武