多国籍企業とタックスヘイブン ―租税回避額の推計を中心に―

経済のグローバル化によって多国籍企業のタックスヘイブンを利用した租税回避が拡大している。また、デジタル経済の発展とともにIT多国籍企業が高収益をあげる反面、納税額が少ないことが問題になっている。現代世界経済の変容に対して、従来の国際課税のルールは十分な対応ができていない。こうした問題意識から、OECDおよびG20は、多国籍企業のタックスヘイブンを利用した租税回避への包括的な対策(BEPSプロジェクト)に取り組んでいる。

 このような課題に対処する前提として、多国籍企業による租税回避額の規模の推計が不可欠であろう。タックスヘイブンの秘密主義、租税回避範囲の曖昧さなどから、明確な規模の測定は困難であるが、すでに多くの調査報告が公表されている。ただしそれらの成果をみると、推計対象、使用データ、分析方法、推計結果などが種々様々であり、諸推計を比較・検討する必要がある。また富裕層の租税回避の規模についても、同様の検討が求められている。

以下では、富裕層・多国籍企業の租税回避額を推計した主な調査報告について、方法論の違いをもとに3区分したうえで各調査報告の概略を示し、現時点における推計作業の到達点を明らかにしていきたい。

 

◆オフショア資産アプローチ

 オフショアとは金融規制のゆるい(当局の監視が及びにくい)市場を指し、ここでは広義のタックスヘイブンとしておく。富裕層がオフショア市場に保有している金融資産の量から租税回避額を推計するのがこのアプローチである。

 タックスヘイブン問題に取り組む代表的なNGOであるタックス・ジャスティス・ネットワーク(TJN)は2012年にThe Price of Offshore Revisitedを発表した。IMF国際収支統計、BIS資金移動統計、大手50銀行財務諸表等を資料とし、公式統計の不整合、オフショア資産の自己増殖、投資家の資産運用モデル、大手50行のオフショア資産量など、複数の推計手法を併用し、オフショア預金7兆ドル、有価証券・ファンドでの運用はその2~4倍とみて、総額21~32兆ドルを算出している(2010年)。21兆ドルの運用利回り3%、税率30%と仮定し、所得税1890億ドルが回避されたと結論づける。

 世界の貧困問題に取り組むNGOであるOXFAMは、世界の富裕層の資産額を推計し、貧富の格差拡大を証明する報告を毎年発表している。2019年1月発表のPublic Good or Private Wealth?では、世界の上位1%の超富裕層が世界全体の資産の47%を占有し、最上位26人が下位50%(38億人)と同等の資産を有していることを明らかにした。租税回避の推計は後述のズックマンに依拠しており、提言としては富裕層への富裕税強化、上位1%の資産85兆ドル(2015年)に0.5%課税で4000億ドル以上の税収増と主張している。

 ピケティの弟子にあたる経済学者ズックマンは、『失われた国家の富』(NTT出版、2015年)のなかで、富裕層のオフショア金融資産を5.8兆ユーロ、そのうち税務申告されない部分を4.7兆ユーロと推計し、それによって所得税、相続税、財産税計1300億ユーロの税収損失が発生したと計算している。彼は、TJNの推計は大きすぎると批判し、オフショア銀行預金1兆ユーロ、国際収支統計の対外資産・負債差額(隠された資産)4.8兆ユーロ、計5.8兆ユーロという数字の方が正確だと主張する。ズックマンは対象を限定しすぎており、実態は、TJN推計よりは少なく、ズックマン推計よりは多いといえよう。

 

◆直接投資・税率格差アプローチ

 多国籍企業の直接投資・収益率と世界各国・地域の法人税収・税率格差に着目し、オフショアを利用した法人税の租税回避額を推計する方法である。統計学的分析ツールを多用して結論を導いており、その限りではオフショア資産アプローチより緻密であるといえる。

 IMFは2014年、各国の法人税制が直接投資に及ぼす影響度を検討したポリシーペーパーSpillovers in International Corporate Taxationを公表した。この報告は、IMFが保有する1980~2013年、173カ国の直接投資と法人税に関するデータを用いて、各国の租税政策が他国の課税ベース(直接投資・利益移転動向)あるいは法人税率の水準に与える影響を検討している。OECD諸国と発展途上国を区分し、租税切下げ競争やタックスヘイブンの悪影響は途上国の方が大きいことを強調している。税収に関しては、世界全体では現在の法人税収の5%、途上国のみでは13%程度の損失が生じていると推計する。

 UNCTADは、World Investment Report 2015年版のなかで国際課税の問題を取り上げ、多国籍企業のオフショア投資を通じた租税回避額の推計を試みている。IMFとUNCTADの統計を使い2009~2012年における世界の直接投資の動向を追跡しているが、世界各国を非オフショア、SPE(オランダ、ルクセンブルクなどの投資中継国)、タックスヘイブン(低税率国)に3分し、SPEの役割を強調していることが注目される。こうした区分を使って投資経路別の投資額と収益率の関係を測定し、利益移転額と税収損失額を算出して、途上国660~1200億ドル、先進国1050億ドル、全世界で約2000億ドルの法人税損失額を導出している。

 BEPSプロジェクトに取り組むOECDは、2015年に公表した行動計画11のレポートMeasuring and Monitoring BEPSで綿密な租税回避額の推計を行っている。そこではORBISという全世界の企業データベースに基づき、6項目のBEPS指標(多国籍企業グループにおける低税率国への利益の集中、非多国籍企業との実効税率格差等)を用いながら、税率格差、国内優遇税制などの要因を考慮して税収損失の総額を計算している。それによると、2014年の世界の法人税収は、4~10%(1000~2400億ドル)の損失を生じているという。

 以上のような国際機関による推計は、手法の違いにもかかわらずほぼ1000~2000億ドル程度の租税回避額で一致している。それに対して、その後、より多くの租税回避額を算出する研究が現れている。

IMFのスタッフであるE. Crivelliらは2016年に Base Erosion, Profit Shifting and Developing Countries, IMF Working Paperを発表し、IMFの2014年の報告と同様のデータ、問題意識のもとに、推計方法に工夫を加え、平均実効税率の動きに注目しつつ、BEPS規模の新推計を試みている。それによると、先進国では4000億ドル(GDP比1%)、途上国では2000億ドル(GDP比1.3%)、合計6000億ドルの税収損失が生じているという。

これに対して、TJNメンバーであるA. Cobhamらは、2017年にGlobal distribution of revenue loss from tax avoidance, UNU-WIDERを発表し、Crivelliらの方法を継承しつつ、政府歳入データベースの活用、タックスヘイブンの範囲と平均実効税修正により、先進国3000億ドル、途上国2000億ドル、合計5000億ドルの税収損失を算出した。この報告では国別に税収損失額を示している点が目新しく、日本は米国、中国に次いで第3位、468億ドル(GDP比0.93%)の損失とされている。

 

◆その他のアプローチ

米国のNGO、Global Financial Integrityは、2017年にIllicit Financial Flows to and from Developing Countries: 2005-2014を公表した。これは世界貿易統計における輸出と輸入の食い違いを根拠に、途上国の資金流出入における不正な量を推計したもので、2005~2014年平均で流出の4.6~7.2%、流入の9.5~16.8%、金額ベースでは6000億~2兆ドル規模の不正資金移動があるとする。ただし、そのなかの租税回避部分の割合は明らかでない。

 同じく米国の団体であるU.S.PIRG、ITEPは、Offshore Shell Games 2017を公表し、米国多国籍企業のタックスヘイブンを通じた租税回避について、個別企業の金額を推計した。納税情報の得られる58社の金額をあげており、第1位のアップルは767億ドル回避とする。こうしたミクロベースの積み上げ作業とマクロレベルの推計とをいかに接合していくかが今後の課題となろう。

                (政治経済研究所『政経研究時報』21-4、2019年4月)

円安と減税で儲けるトヨタ

円安と減税で儲けるトヨタ

                          POLITICAL ECONOMY 23号

                          2014年10月3日                                   

  • 記録更新が続く営業利益

 トヨタ自動車の業績が好調だ。2013年度(2014年3月期:2013年4月~2014年3月)の営業利益は2兆2921億円に達し、6年ぶりに過去最高益を実現した(連結ベース)。純利益1兆8230億円、売上高25兆6920億円、生産台数903万台というたいへんな記録である。3月の賃金交渉では、政府の要請を受け入れ、トヨタは2700円のベースアップを回答している。

 2014年4~6月期の営業利益も6927億円に達し、四半期としては過去最高を実現した。純利益5877億円も過去最高だ。間もなく発表される7~9月期の業績もほぼ同様となるだろう。

トヨタは2014年5月の決算説明会で、前年度から営業利益が9712億円増加した要因について、為替9000億円、原価低減2900億円、営業努力1800億円等のプラス面、諸経費増加4800億円といったマイナス面をあげている。近年は原価低減、つまり部品調達コスト削減などの生産過程にかかわる要因が大きく、為替変動は円高によりマイナス要因であったのが、2013年度はアベノミクスによって円安が進んだ効果が大きかったといえる。トヨタの計算では米ドルは83円から100円へ、ユーロは107円から134円へと変動している。

 しかし、トヨタは円安を利用して輸出台数を伸ばしたわけではない。決算報告書に記載された日本国内の生産台数から販売台数を引いた数字を輸出台数としてカウントしてみると、2012年度の200万台に対して、2013年度は197万台にとどまっている。つまり、円安に対応して海外での販売価格を下げて台数を伸ばすのでなく、販売価格を据え置いて円での手取り額を増やしたと考えられる。

この結果、生産台数は前年度に比べてそれほど大きく伸びていないにもかかわらず、営業利益は73.5%も引き上げられることになった。これを反映して、純利益は89.5%の増加を達成した。

 

  • トヨタはどれだけ税金を納めているのか

 2014年5月8日の決算発表の席上、豊田社長は次のような注目すべき発言をしている。

 「この4年間、関係する皆様のご協力をいただきながら懸命に努力を続けたことにより、経営体質は確実に強くなりました。日本においても税金を納めることができる状態となり・・・」

 これはどういう意味か。現在の日本の法人税制では、収益(課税所得)がマイナスにな

った場合、その年度に納税を免れるだけでなく、マイナス分を次年度以降に繰り越し、マ

イナスが解消するまで最長7年間税金を納めないでおくことができる。2008年のリーマ

ンショックで赤字に陥ったトヨタは、日本国内では2008年度から4年間、欠損の繰り越

しを行い、海外子会社の収益と相殺し、大幅に納税額を削減してきた。2007年度の納税額

が9115億円に達していたのに対し、2008年度は実質ゼロ、以下2009年度927億円、2010

年度3128億円、2011年度2623億円、2012年度5517億円と推移し、2013年度は7678

億円まで増加してきた。それでも2007年度の水準には復帰していない。

 

  • 減税政策の恩恵

 アベノミクスの成長戦略の目玉として、法人税減税が取り沙汰されている。しかし、トヨタのような大企業に対しては、すでに手厚い減税措置が講じられている。2013年度の場合、税引き前利益は2兆4411億円であり、これに法定税率37.6%をかけると、税額は9179億円となる。ただし、研究開発費等の税額控除1587億円、海外子会社との法定税率の差(外国税額控除)781億円など、様々な控除が加わり、納税額7678億円、実効税率は31.5%に低下している。

 また、税引き前利益の算出にあたっても、税制上の問題がある。『文芸春秋』2013年9月号の富岡幸雄氏による「法人税を下げる前に企業長者番付の復活を」という記事は、「受取配当金益金不算入制度」の不当性を論じている。これは、企業が保有する他社株式の配当金を受け取った場合、関係会社からの配当金は100%、それ以外の会社からの配当金は50%が利益金に算入されないという制度である。トヨタの2008年から13年までの受取配当金は6年間で2兆3246億円にのぼるが、この多くの部分には税金がかからないというのである。こうした項目を算入した税効果会計適用後の2013年度実効税率は何と22.9%まで減少する。

このような法人税制を残したまま、法定税率を20%台まで引き下げていくとすれば、トヨタの実質的税負担がさらに軽くなることは間違いない。

【概説】日本製造業の対外直接投資

【概説】日本製造業の対外直接投資

                                 2017年9月

 

 日本多国籍企業のグローバル展開が深化し、国民経済との乖離が進行している。GDPと輸出の伸びが低迷する一方、これと対照的に対外直接投資はかつてない規模で拡大を続けている。この乖離が、大企業優遇の「アベノミクス」が一向に経済成長をもたらさない要因の一つとなっている。ここでは、日本の対外直接投資における製造業部門の動向に注目し、多国籍企業を代表する自動車と電機の2業種を中心にして、グローバル化の現況について統計データを用いて考察する。

 

1.対外直接投資の増大

 最初に、日本の対外直接投資の長期的動向を確認しておきたい。1970年代から2010年代まで、5年ごと(5年平均)の投資額を算出してみると、1980年代前半までは年間10~50億ドル程度であったのが、1980年代後半から2000年代前半では200~300億ドル水準へと増大した。2000年代後半からはさらに規模が拡大し、2010年代前半には年間1200億ドルを記録した。1970年代前半の100倍に達する額である。

 

表1 日本の輸出・直接投資・GDP         
               
  輸出 対外直接投資 名目GDP 輸出/GDP 投資/GDP 投資/輸出 為替レート
  (百万ドル) (百万ドル) (十億ドル) (%) (%) (%) 円/ドル
1971-75 40,278 1,352 392 10.28 0.34 3.36 302.88
1976-80 95,868 2,258 881 10.88 0.26 2.36 244.28
1981-85 156,740 5,093 1,243 12.61 0.41 3.25 236.64
1986-90 253,696 32,073 2,734 9.28 1.17 12.64 144.81
1991-95 371,468 20,450 4,398 8.45 0.46 5.51 113.77
1996-2000 423,693 25,585 4,422 9.58 0.58 6.04 116.47
2001--05 490,463 35,145 4,334 11.32 0.81 7.17 116.25
2006--10 698,698 77,264 4,819 14.50 1.60 11.06 103.75
2011--15 730,213 122,918 5,102 14.31 2.41 16.83 96.84
               
出所:アジア経済研究所、アジア動向データベース、対外直接投資はジェトロ、データベース。
       2015年はすべてジェトロ、データベース。        
注 :各項とも5年平均。          

 

 この間、日本のGDPも輸出も増大しているとはいえ、対外直接投資の伸びはそれをはるかに上回っている。その対GDP比は0.3%から2.4%へ、また対輸出総額比は3%から17%へと上昇した。背景には為替レートの引上げ(円高)があり、さらに近年のグローバル競争の激化が大規模M&Aの増加をもたらしている。

 対外直接投資を業種別にみると、非製造業(主に金融・保険、商業)がつねに製造業を上回っているが、製造業も一貫して増加している。製造業のなかでは、1990年代までは電気機械が最大であったところ、2000年代以降は輸送用機械がトップについている。

表2 直接投資の業種別推移(フロー)            
                (単位:百万ドル)
  製造業       非製造業       総計
    化学 電機 輸送機   商業 金融・保険 サービス  
1971-75 822 145 90 55 1,500 365 196 85 2,473
1976-80 1,507 370 211 124 2,454 640 225 184 4,111
1981-85 2,365 271 433 479 6,863 1,454 1,687 659 9,430
1986-90 11,443 1,392 3,323 1,501 33,360 3,728 10,892 5,996 45,431
1991-95 13,238 2,023 2,978 1,632 27,109 4,755 5,583 6,655 40,838
1996-2000 21,211 2,197 7,209 3,264 30,260 4,194 10,898 3,796 51,952
2001--04 14,726 2,927 3,707 3,968 20,066 3,148 10,702 1,937 35,199
2005--10 32,697 6,413 4,275 5,631 39,268 6,430 18,892 1,527 71,964
2011--15 52,335 8,994 6,560 9,175 73,856 14,105 22,178 5,435 124,807
                   
出所:ジェトロ、データベース              
注 1) 1971-2004年は届出ベース、年度、2005-15年は国際収支ベース、暦年      
    2) 各項とも原則として5年平均              
  3) 総計には支店、不動産を含む            

 

 

また、地域別にみると、1990年代までは北米が他を引き離して首位の座にあったが、2000年代以降は北米、アジア、欧州がほぼ同じ規模で並ぶ形になり、グローバル化の進展を示している。またアジアのなかでは、中心地域がNIESからASEANへ、次いで中国へと移動していったが、2010年代前半には3地域がそれぞれ年間100億ドル規模で並立する様相となった。

表3 直接投資の地域別推移(フロー)                  
                    (単位:百万ドル)  
  アジア       北米 中南米 大洋州 欧州 中東 アフリカ 総計 国際収支
    中国 NIES4 ASEAN4             届出ベース ベース
1971-75 693 0 252 434 601 463 130 376 128 82 2473 1,352
1976-80 1122 5 420 691 1176 657 319 391 257 189 4111 2,258
1981-85 1927 52 821 1027 3433 1894 344 1306 143 385 9430 5,093
1986-90 5611 507 3126 1915 21844 4969 2772 9653 92 491 45431 32,073
1991-95 8211 2077 2529 3340 17945 3709 2393 7837 292 450 40838 20,450
1996-2000 6924 1355 2119 2873 9325 3239 544 5429 127 77   25,585
2001--05 9544 4240 2453 2534 9182 4181 1210 10450 106 176   35,145
2006--10 20534 6607 5717 4588 18705 12878 5005 19060 513 569   77,264
2011--15 37789 10898 10629 12145 38716 9268 7986 33041 692 556   122,918
                         
出所:ジェトロ、データベース                    
注 1) 1971-95年は届出ベース、年度、1996-15年は国際収支ベース、暦年            
    2) 各項とも5年平均                      

 以上はフロー・ベースでの検討であるが、ストック・ベースで地域と業種を組み合わせて1990年、2004年、2015年の推移をみると、非製造業では北米、欧州、中南米の順が北米、欧州、アジアの順へ、また製造業では北米、アジア、欧州の順がアジア、北米、欧州の順へと変動し、アジアの地位が上昇していることがわかる。

 

表4 対外直接投資の地域別・業種別構成(ストック、1990年度末)      
                 
              (単位:億ドル)
  北米 中南米 アジア 中東 欧州 アフリカ 大洋州 合計
製造業 404 63 187 13 125 2 23 816
 化学 48 8 26 11 14 0 1 109
 電機 111 6 42 0 43 0 1 204
 輸送機 50 13 17 0 19 0 9 109
非製造業 943 345 281 7 447 56 157 2,231
 商業 170 22 38 0 67 0 16 313
 金融・保険 194 147 42 1 251 0 18 653
 サービス業 207 15 57 0 33 7 27 347
総計 1,362 405 475 34 593 58 181 3,108
                 
出所:『財政金融統計月報』476号、1991年12月、54-61頁。      
注 1) 許可・報告ベース、1951-90年度の累計。          
    2) 業種別総計には支店、不動産を含む。          

 

表5 対外直接投資の地域別・業種別構成(ストック、2004年度末)      
                 
              (単位:十億円)
  北米 中南米 アジア 中東 欧州 アフリカ 大洋州 合計
製造業 16,756 2,764 11,269 435 8,602 173 1,097 41,097
 化学 2,260 286 1,639 327 1,257 8 46 5,823
 電機 5,974 339 2,627 7 1,888 3 38 10,875
 輸送機 1,912 736 1,555 1 2,066 73 280 6,623
非製造業 30,056 13,471 10,180 264 20,944 1,583 4,709 81,207
 商業 5,771 835 1,862 27 3,587 11 496 12,589
 金融・保険 5,964 6,448 1,822 39 10,714 33 354 25,374
 サービス業 7,318 631 1,908 5 1,615 163 693 12,334
総計 47,191 16,263 22,033 1,190 30,033 1,758 5,839 124,306
                 
出所:『財政金融統計月報』645号、2006年1月、32-39頁。        
注 1) 許可・報告ベース、1951-2004年度の累計。        
    2) 業種別総計には支店、不動産を含む。          

 

表6 対外直接投資の地域別・業種別構成(ストック、2015年末)      
                 
              (単位:十億円)
  北米 中南米 アジア 中東 欧州 アフリカ 大洋州 合計
製造業 20,785 3,004 24,352 706 14,886 293 1,689 65,714
 化学 5,296 148 3,154 490 2,083 24 154 11,348
 電機 3,621 209 4,420 14 2,918 0 4 11,185
 輸送機 3,689 827 5,594 24 2,622 93 94 12,942
非製造業 30,941 5,424 18,189 111 19,300 942 7,179 82,086
 商業 9,922 523 5,356 -19 4,518 20 527 20,850
 金融・保険 11,980 2,165 7,358 62 6,681 286 885 29,417
 サービス業 1,368 46 1,137 1 956 14 153 3,677
総計 51,725 8,429 42,540 817 34,186 1,235 8,868 147,800
                 
出所:財務省ウエブサイト。            

 

 さらに、国際比較をしてみると、1990年代から2010年代にかけて主要国は軒並み対外直接投資規模、対GDP比率を上昇させていることが明らかになる。2015年のストック・ベースでみると、日本は国別順位で6位にあり、対GDP比は29.7%に達しているが、日本より上位にあるドイツ、イギリス、フランスはいずれも50%を越える水準を記録しており、日本にはまだ拡大の余地があることをうかがわせている。

 

表7 対外直接投資の上位国(ストック)      
          (単位:十億ドル、%)
  1990年   2005年   2015年  
  総額 GDP比 総額 GDP比 総額 GDP比
米国  ① 732 12.2  ① 3638 27.8  ① 5983 33.3
ドイツ  ② 309 19.4   ③  794 27.7  ② 1812 54
イギリス   ③  229 20.9   ②  1216   50.2  ③ 1538 54
フランス  ⑤ 120 9.4  ⑥   634 28.7  ⑤ 1314 54.3
香港   ⑰  12     ⑧   476    ④ 1486  
日本   ④ 201 6.5  ⑩  387 8.5  ⑥ 1227 29.7
             
出所:ジェトロ、データベース        

 

2.海外比率の上昇

 次に、経済産業省「海外事業活動基本調査」に基づき、日本の製造業企業の各種海外比率の推移を検討しよう(国内+海外に対する海外の割合を海外比率とする)。国内製造業事業所数(「工業統計表」)と海外製造業現地法人数とを比較すると、全製造業では1985年から2014年にかけて国内は46%に減少する一方、海外は5.0倍に増加しており、海外事業所数比率は0.5%から5.0%へと上昇した。電気機械(情報通信機械を含む)では、国内は43%に縮小する一方、海外は3.3倍に増大し、海外比率は1.5%から10.5%へと上昇した。ただし、2000年以降海外法人数が低迷している点は注意を要する。輸送用機械では、国内は67%に減少した反面、海外は8.7倍に拡大し、海外比率は1.6%から17.6%へと上昇した。

表8 製造業事業所数の推移              
                   
    全製造業     電機     輸送機  
  国内 海外 海外比率 国内 海外 海外比率 国内 海外 海外比率
1985 438,518 2,105 0.5 34,196 513 1.5 15,521 253 1.6
1990 435,997 3,408 0.8 36,116 884 2.4 15,539 407 2.6
1995 387,726 5,243 1.3 31,342 1,278 3.9 14,506 718 4.7
2000 341,421 7,464 2.1 27,522 1,827 6.2 13,327 1,036 7.2
2005 276,716 8,048 2.8 20,753 1,848 8.2 12,420 1,375 10.0
2010 224,403 8,412 3.6 16,563 1,511 8.4 11,110 1,659 13.0
2014 201,147 10,592 5.0 14,602 1,711 10.5 10,340 2,201 17.6
                   
出所:国内は、経済産業省「工業統計表」            
    海外は、経済産業省「海外事業活動基本調査」          

こうした事業所ベースでの国内縮小、海外拡大、海外比率上昇傾向は、従業者数ベースでも同様に確認できる。同じく1985年から2014年にかけての変化をみると、全製造業では国内従業者数は67%に減少する一方、海外現地法人従業者数は6.4倍に増加し、海外従業者数比率は6.2%から38.3%へと上昇した。電気機械では、国内は55%に縮小する一方、海外は4.8倍に増大し、海外比率は10.5%から50.3%へと上昇した。海外比率50%超とは、海外が国内を上回ったことを意味する。ただし、ここでも電気機械の海外従業者数は2000年以降横ばい状態にある点には留意しておきたい。輸送用機械の場合は様相がやや異なり、国内で横ばい状態を維持する一方、海外は14.2倍に増大し、海外比率は10.5%から62.2%まで上昇した。

 

表9 製造業従業者数の推移               
                (単位:千人、%)
    全製造業     電機     輸送機  
  国内 海外 海外比率 国内 海外 海外比率 国内 海外 海外比率
1985 10,890 715 6.2 1,825 214 10.5 962 113 10.5
1990 11,173 1,242 10.0 1,940 419 17.8 943 230 19.6
1995 10,321 1,855 15.2 1,750 614 26.0 914 402 30.5
2000 9,378 2,806 23.0 1,604 1,048 39.5 857 625 42.2
2005 8,159 3,622 30.7 1,257 1,325 51.3 944 962 50.5
2010 7,664 3,973 34.1 1,148 1,184 50.8 949 1,228 56.4
2014 7,347 4,566 38.3 1,008 1,019 50.3 976 1,603 62.2
                   
出所:国内は、経済産業省「工業統計表」            
    海外は、経済産業省「海外事業活動基本調査」          

 海外生産(売上)比率はどうか。全製造業の国内全法人売上高(「法人企業統計」)は1990年から2014年にかけておおむね横ばい状態であったが、海外現地法人売上高は5.0倍に増加し、海外売上比率は6.0%から24.3%へと上昇した。電気機械では、国内はやや減少し、海外は2.6倍に増加して、海外比率は10.2%から25.0%へと上昇した。ただし、海外売上高は2000年以降低迷している。輸送用機械では、国内も1.4倍に増大する一方、海外は8.7倍に拡大したため、海外比率は12.4%から46.9%へと上昇した。

表10 海外生産比率の推移      
          (単位:%)
  全製造業   電機 情報通信機械 輸送機
年度 国内全法人 海外進出企業 国内全法人 国内全法人 国内全法人
1985 3.0 8.7 7.4 -- 5.6
1990 6.4 17.0 11.4 -- 12.6
1995 9.0 24.5 16.8 -- 20.6
2000 11.8 24.2 18.0 -- 23.7
2005 16.7 30.6 11.0 34.9 37.0
2010 18.1 31.9 11.8 28.4 39.2
2014 24.3 38.2 17.2 30.7 46.9
           
出所:経済産業省「海外事業活動基本調査」。  
注 : 電機の2000年度以前は、情報通信機械を含む。  

設備投資について、1991~1995年平均と2011~2014年平均とを比較すると、全製造業では国内が69%に縮小する一方、海外は2.4倍に拡大し、海外設備投資比率は9.3%から26.2%まで上昇した。電気機械では、国内が68%に減少、海外が1.2倍に増加して、海外比率は12.9%から20.4%へと上がった。ただし、海外の設備投資も伸び悩み、海外比率は全製造業平均より低くなっている。輸送用機械では、国内は若干減少、海外は4.1倍に拡大し、海外比率は19.3%から51.1%へと上昇を遂げている。

 

表11 製造業設備投資の推移              
                (単位:十億円、%)
年度   全製造業     電気機械     輸送機械  
  国内 海外 海外比率 国内 海外 海外比率 国内 海外 海外比率
1991-1995 16,595 1,710 9.3 2,911 431 12.9 1,979 474 19.3
1996-2000 13,444 2,466 15.5 3,134 639 16.9 1,682 747 30.8
2001-2005 11,468 2,556 18.2 2,263 478 17.4 1,962 1,126 36.5
2006-2010 14,288 3,235 18.5 2,683 530 16.5 2,168 1,483 40.6
2011-2014 11,386 4,048 26.2 1,992 512 20.4 1,842 1,922 51.1
                   
出所:国内は財務省「法人企業統計」、海外は経済産業省「海外事業活動基本調査」。    
注 1) 各項とも原則として5年平均。            
  2) 電気機械には情報通信機械を含む。            

 総じて、製造業全般の海外比率が上昇していくなかで、電気機械は国内のみならず海外現地法人も低迷し、輸送用機械の躍進と対照的であることに注目すべきであろう。

トヨタ2016年度決算から見えてきたもの

トヨタ2016年度決算から見えてきたもの

         (フィリピントヨタ労組を支援する会『フィリピントヨタ労組とともに』17号、2017年8月)

                           

  • 減収減益決算

 トヨタの2016年度(2016年4月~17年3月)決算は、売上高が前年度より8059億円(2.8%)減少、営業利益が8595億円(30.1%)減少、純利益が4815億円(26.5%)減少という結果となった。ここ数年、売上高、営業利益などは増加基調であっただけに、今期の落ち込みは際立っている。

 

表1 トヨタの経営実績    
  2016年度 2015年度 前期比
売上高(億円) 275,971 284,031 -8,059
営業利益(億円) 19,943 28,539 -8,595
純利益(億円) 18,311 23,126 -4,815
従業員数(人) 364,445 348,877 15,568
生産台数(万台) 898 858 40
  国内生産(万台) 411 398 13
   海外生産(万台) 487 460 27
販売台数(万台) 897 868 29
  国内販売(万台) 227 206 21
  海外販売(万台) 670 662 8
設備投資額(億円) 12,118 12,925 -807
       
出所:トヨタ「決算報告」2017年3月期。  

 

 

 営業利益の減少要因については、為替変動9400億円、諸経費増加5300億円などのマイナスがあげられ、原価改善努力4400億円、営業努力2100億円のプラス効果を上回ったためと指摘されている。2016年の円高傾向が、輸出依存度の高いトヨタに打撃を与えたと考えられる。ただし、2017年5月の決算発表時の豊田章男社長のあいさつでは、減収減益の事実にはふれず、「今回の決算は、為替の追い風も向い風も無い中で、まさに現在の等身大の実力が素直に表れたもの」と平静を装っている。

 減益の結果、法人税等は6289億円(前期比28.4%減)、実効税率は税額控除や海外子会社益金の影響により28.7%となり、法定法人税率を下回った。   

 なお、決算発表と同時に示された2017年度(2017年4月~18年3月)の決算見通しによれば、売上高は0.4%減、営業利益は19.8%減、純利益は18.1%減と、2期連続減収減益としている。2期連続の営業利益減少は18年ぶりのことで、トヨタの拡大路線の行詰まりを示している。

 

  • 北米市場での苦戦

 減収減益にもかかわらず、生産台数と販売台数はわずかながらも増加している。これは、安いクルマが売れたにもかかわらず、高いクルマが売れなかったことを意味している。地域別にみると、北米市場での苦戦が明らかである。

 

表2 トヨタの地域別業績    
    2016年度 2015年度 前期比
売上高 日本 148,308 147,594 714
(億円) 北米 102,390 110,519 -8,129
  欧州 26,810 26,613 197
  アジア 48,198 50,038 -1,840
営業利益 日本 12,022 16,775 -4,753
(億円) 北米 3,111 5,288 -2,177
  欧州 -122 724 -846
  アジア 4,351 4,491 -140
生産台数 日本 411 398 13
(万台) 北米 206 197 9
  欧州 64 57 7
  アジア 167 161 6
販売台数 日本 227 206 21
(万台) 北米 284 284 0
  欧州 93 84 9
  アジア 159 135 24
設備投資 日本 6,402 6,468 -66
(億円) 北米 3,745 2,342 1,403
  欧州 589 777 -188
  アジア 1,031 2,397 -1,366
         
出所:トヨタ「決算報告」2017年3月期。  

  

 

販売台数は、各地域が増加を記録するなかで、北米のみが2千台の減少となった。売上高では、北米は8129億円(7.4%)の減少であり、全体の減少額を上回る落ち込みをみせた。営業利益に至っては、2177億円(41.2%)という大幅な下落を示した。減益要因として、販売面の影響1250億円、諸経費増加1150億円、為替変動450億円などのマイナスが原価改善努力1100億円のプラス効果を上回ったことが指摘されている。会社資料によると、貸倒関連費用、残価損失関連費用の増加などが特に記載されており、無理な営業活動の失敗によるものと考えられる。

 こうした状況のなかで、トランプ政権からメキシコの工場建設反対、アメリカ工場増強の圧力が加えられ、豊田社長はあわてて今後5年間で100億ドルをアメリカ国内に投資すると表明せざるをえなくなった。電動化、自動運転化などの急激な技術革新とともに、企業間の競争が激化しており、トランプ大統領の場当たり的な経済政策に振り回されながら、北米市場でのトヨタの苦戦は今後も続くものと思われる。

 

  • アジア市場の可能性

 グローバル企業であるトヨタは、全世界に製造・販売拠点を展開しているが、地域別にみると北米が最重点地域であることは間違いない。販売台数は日本国内を上回るほどであり、売上高は海外地域のなかで一貫して最大である。

 ただし、生産台数、営業利益、設備投資額などではアジア地域の役割も大きくなっている。試みに、過去6期の北米とアジアの実績を比較してみると、アジアが北米を上回ったのは、生産台数では3期、営業利益では4期、設備投資額では4期となっている。アジアのなかでは、世界最大の自動車市場となった中国が大きいことは言うまでもない。

 2016年の国別生産台数ランキングをみると、アメリカ138万台、中国107万台、カナダ60万台、タイ56万台、インドネシア31万台、フランス24万台、イギリス18万台、ブラジル18万台、トルコ15万台、インド15万台であり(『東洋経済』2017年4/29-5/6)、上位10カ国のうちアジアが半分を占めている。なかでも中国の天津は49万台、広州は42万台という巨大工場である。なお、フィリピンは5万5千台であり、規模は小さい。

 今後、アジアの経済成長、自動車市場の拡大とともに、トヨタのアジア拠点の役割はさらに大きくなっていくだろう。そのなかで、フィリピントヨタ争議の解決を放置しておくことは、トヨタにとってどうみても得策とはいえないのではないか。