円安と減税で儲けるトヨタ
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- 公開日:2017年11月05日(日)12:17
円安と減税で儲けるトヨタ
POLITICAL ECONOMY 23号
2014年10月3日
- 記録更新が続く営業利益
トヨタ自動車の業績が好調だ。2013年度(2014年3月期:2013年4月~2014年3月)の営業利益は2兆2921億円に達し、6年ぶりに過去最高益を実現した(連結ベース)。純利益1兆8230億円、売上高25兆6920億円、生産台数903万台というたいへんな記録である。3月の賃金交渉では、政府の要請を受け入れ、トヨタは2700円のベースアップを回答している。
2014年4~6月期の営業利益も6927億円に達し、四半期としては過去最高を実現した。純利益5877億円も過去最高だ。間もなく発表される7~9月期の業績もほぼ同様となるだろう。
トヨタは2014年5月の決算説明会で、前年度から営業利益が9712億円増加した要因について、為替9000億円、原価低減2900億円、営業努力1800億円等のプラス面、諸経費増加4800億円といったマイナス面をあげている。近年は原価低減、つまり部品調達コスト削減などの生産過程にかかわる要因が大きく、為替変動は円高によりマイナス要因であったのが、2013年度はアベノミクスによって円安が進んだ効果が大きかったといえる。トヨタの計算では米ドルは83円から100円へ、ユーロは107円から134円へと変動している。
しかし、トヨタは円安を利用して輸出台数を伸ばしたわけではない。決算報告書に記載された日本国内の生産台数から販売台数を引いた数字を輸出台数としてカウントしてみると、2012年度の200万台に対して、2013年度は197万台にとどまっている。つまり、円安に対応して海外での販売価格を下げて台数を伸ばすのでなく、販売価格を据え置いて円での手取り額を増やしたと考えられる。
この結果、生産台数は前年度に比べてそれほど大きく伸びていないにもかかわらず、営業利益は73.5%も引き上げられることになった。これを反映して、純利益は89.5%の増加を達成した。
- トヨタはどれだけ税金を納めているのか
2014年5月8日の決算発表の席上、豊田社長は次のような注目すべき発言をしている。
「この4年間、関係する皆様のご協力をいただきながら懸命に努力を続けたことにより、経営体質は確実に強くなりました。日本においても税金を納めることができる状態となり・・・」
これはどういう意味か。現在の日本の法人税制では、収益(課税所得)がマイナスにな
った場合、その年度に納税を免れるだけでなく、マイナス分を次年度以降に繰り越し、マ
イナスが解消するまで最長7年間税金を納めないでおくことができる。2008年のリーマ
ンショックで赤字に陥ったトヨタは、日本国内では2008年度から4年間、欠損の繰り越
しを行い、海外子会社の収益と相殺し、大幅に納税額を削減してきた。2007年度の納税額
が9115億円に達していたのに対し、2008年度は実質ゼロ、以下2009年度927億円、2010
年度3128億円、2011年度2623億円、2012年度5517億円と推移し、2013年度は7678
億円まで増加してきた。それでも2007年度の水準には復帰していない。
- 減税政策の恩恵
アベノミクスの成長戦略の目玉として、法人税減税が取り沙汰されている。しかし、トヨタのような大企業に対しては、すでに手厚い減税措置が講じられている。2013年度の場合、税引き前利益は2兆4411億円であり、これに法定税率37.6%をかけると、税額は9179億円となる。ただし、研究開発費等の税額控除1587億円、海外子会社との法定税率の差(外国税額控除)781億円など、様々な控除が加わり、納税額7678億円、実効税率は31.5%に低下している。
また、税引き前利益の算出にあたっても、税制上の問題がある。『文芸春秋』2013年9月号の富岡幸雄氏による「法人税を下げる前に企業長者番付の復活を」という記事は、「受取配当金益金不算入制度」の不当性を論じている。これは、企業が保有する他社株式の配当金を受け取った場合、関係会社からの配当金は100%、それ以外の会社からの配当金は50%が利益金に算入されないという制度である。トヨタの2008年から13年までの受取配当金は6年間で2兆3246億円にのぼるが、この多くの部分には税金がかからないというのである。こうした項目を算入した税効果会計適用後の2013年度実効税率は何と22.9%まで減少する。
このような法人税制を残したまま、法定税率を20%台まで引き下げていくとすれば、トヨタの実質的税負担がさらに軽くなることは間違いない。