【紹介】国連租税協力枠組条約を通じて国際課税の構造を革新する

 Streamlining the Architecture of International Tax through a UN Framework Convention on Tax Cooperation

  By Abdul Muheet Chowdhary and Sol Picciotto

  South Centre, Tax Cooperation Policy Brief, No.21, November 2021, www.southcentre.int 

 国際課税のグローバルな機構(ITO:International Tax Organization, 国際租税機構)の必要性は、2001年の「国連開発資金に関するハイレベルパネル」(UN High-level Panel on Financing for Development)の報告書で提起されていた。経済のグローバル化とデジタル化が進むなか、多国籍企業のタックスヘイブンを利用した租税回避に直面し、先進国はOECD租税委員会を中心にして取組を進め、「税の透明性及び税務目的の情報交換に関するグローバルフォーラム」(Global Forum on Transparency and Exchange of Information for Tax Purposes)を発足させ、租税情報の交換システムを機能させることになった。続いて、BEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクトをG20と協働で立ち上げ、15項目の行動計画を策定した(40カ国)。さらにそれを包摂的枠組へと拡張し、多国籍企業課税の革新的ルール(デジタル課税、最低法人税率の2本柱)の創出を進めている。

こうした先進国主導の国際課税改革に対して、グローバルサウスはルール形成に実質的に参加できず、不利益を被っていると批判している。BEPS包摂的枠組は140カ国が参加するフォーラムへと拡大したとはいえ、事務局はOECD租税委員会が掌握しており、決して民主的ではない、その結果、2本柱の改革案ではアメリカ、イギリス案が採用され、インド案が採用されず、グローバルサウスはメリットを得られないといった批判だ。

そこでグローバルサウス側は、国連租税委員会(UNTC: The Committee of Experts on International Cooperation in Tax Matters)を拠点にして対抗策を打ち出そうとしている。その流れのなかで、SDGsを推進する国連FACTIパネル(UN High Level Panel on International Financial Accountability, Transparency Integrity for Achieving the 2030 Agenda)報告書に示されるように、現存する様々な租税機構・租税条約を包括する国連租税協力枠組条約(UNFCTC: UN Framework Convention on Tax Cooperation)という構想を提起していく。これは気候危機に関する国連気候変動枠組条約(UNFCCC: UN Framework Convention on Climate Change)と同様に、締約国会議(COP: Conference of Parties)を通じてすべての参加国が意思決定に参加することを可能にする仕組みだ。

Abdul Muheet ChowdharyとSol Picciottoは、UNFCTCはUNFCCCと同様にCOPを通じて法的正当性、政治的裏付けを獲得し、様々な国際課税ルール・租税条約を統合して税制におけるグローバルガバナンスを実現できるだろうと主張する。この提案に対しては、すでに機能している機構との整合性がとれない、余計な負担が増えるだけだ、政治的利害が優越して課税主権が侵害される、などの批判が想定されるが、国際的協力と協調を実現しようという政治的意思を結集すれば、そうした批判を乗り越えられるだろうと論じている