ユニクロのサプライチェーン、ジャバ・ガーミンド労働者へ支援を

2015年4月 ユニクロのインドネシアのサプライチェーン、ジャバ・ガーミンド社が破産し、タンゲラン市チクパ工場(1500人)と東ジャワのマジャレンカ工場(2500人)で働いていた4000人の労働者(80%が女性)は、数ヵ月分の給料・退職金が未払いのまま解雇された。労働者たちは再就職先もなく貧困に打ちのめされているが、ブランド企業の社会的責任を追及し、支払を求める闘いを続けている。

 • ジャバ・ガーミンドの労働者に何がおきたのか

ジャバ・ガーミンド社は、ユニクロをはじめ大小のブランド、S.Oliver, Jack Wolfskin, Gerry Weber(ドイツ), Trutex(英国)のニット製品を生産していた。

ユニクロは、2012年10月から2014年10月まで、ジャバ・ガーミンド社に生産委託をおこなっていた。ユニクロはジャバ・ガーミンド社の主要なバイヤーではないと主張しているが、労働者は両工場ともユニクロ製品を大量に生産していたと証言する。

ユニクロによれば、2014年はじめから品質問題や納期の遅れが生じ、ジャバ・ガーミンド社へ警告をだしたが是正されなかったので、発注量を2014年4月から徐々に減らし10月に取引を停止したという。その後、何がおきたのか。

ユニクロの撤退と他のブランドの撤退も重なり注文が激減したため、2015年の初めから賃金不払いが続いた後、2月に全く支払われなくなり、組織化が弱かったマジャレンカ工場の労働者は2月に停職になった。チクバ工場では、2つ組合―インドネシア労働運動でリーダーシップを発揮しているFSPMIの支部と独立組合GSBIの支部―の力が強かったこともあり、3月から賃金の支払いをもとめて抗議行動をおこなっていたが、4月初めに停職になり、これ以後、労働者たちは工場前で抗議行動を続行したが、工場にもどれることはなかった。

複数の債権者が裁判所に会社を訴えたため、4月22日、裁判所は破産宣告をおこなう。会社の資産を管理するために裁判所によって指名された管財人は、正式な工場閉鎖の日は5月7日であり、労働者全員は2015年6月21日に退職することになると発表した。労働省は、労働者が2015年3月から6月までの賃金、退職金、2015年のボーナスを受け取る権利があると定めた。この労働債権の総額は1000万ドルになる。債権者である銀行は、素早く会社の主な資産を押え、売り払った。残りの資産を売却した後、管財人は労働者の債権への支払いをしたが、その額は450万ドルと総額の半分以下。残りの550万ドルが未払いのままであり、この金額をバイヤーであったユニクロなどのブランドに支払ってほしいというのが、労働者の願いだ。

失業した女性たちは再就職先が見つからず、多数の労働者が住むところを失い、子どもたちの学費を払えず、借金を重ねている。未払いの賃金・退職金は、彼女と家族にとってなくてはならないものだ。

 • 世界から支援が

労働者は世界的に有名な労働NGO、WRC(ワーカーズ・ライト・コンソーシアム)とCCC(クリーン・クローズ・キャンペーン)に支援を求めた。WRCは調査を行い、報告書を刊行し、ユニクロにも送るとともに、労働者への支払いを要請した。その後も、労働NGO・労働組合は、有名ブランドのサプライチェーンの争議で、注文主であるブランドが労働者に労働債権を支払う場合も増加している流れを背景に、ユニクロ、およびその他のブランドに、労働債権を支払うように要請する手紙を送りつけた。ユニクロ(ファストリテ―リング)は、それぞれの要請に対して返事を送ってはいるものの、返事の内容はほとんど変わらない。取引期間中は契約を滞りなく履行していた、契約終了後の工場閉鎖は無関係だとしている。また、同社のソーシャル・コンプライアンス・プログラムを通じて、労働者へはインドネシアの法規どおりの賃金・手当てが支給されていることをモニターしていたというのだ。サプライチェーンへの社会的責任のとりかたは、本当にこれで正しいのだろうか?

組合は、ブランドの一つ、Jack Wolfskinがメンバーとなっている、FWF(フェア・ウェア・ファンデーション)に苦情を訴えた。その結果、Jack Wolfskin はFWFの勧めに従い、自社の注文量に応じて2016年末に未払いの550万ドルの一部を寄付することにした。Jack Wolfskinはユニクロに比較すると小規模なブランドだが、サプライチェーン労働者への責任をとる姿勢をしめした。ユニクロはどうなのか。 

 • ユニクロ・キャンペーンがスタート

労働NGOは国境を越えて連携し、ユニクロをはじめとする他のブランドへもサプライチェーンへの責任を問おうと、今年、2017年の初めからキャンペーンをスタートした。3月からイギリスの老舗NGO・WoW(ワー・オン・ウォント)は、署名活動をウェブサイトでおこなっている。CCC東アジア(CCCEA)の運営団体の一つである、横浜アクションリサーチもこれに加わった。

私たちは、ユニクロに2月21日3月8日8月15日に連名で手紙を送ったが、ユニクロからの返信は、契約が終了した後のサプライチェーンに関しては責任がないという立場を変えていない。しかしながら、2月28日にユニクロが委託工場リストを公開したことは、私たちのキャンペーンもふくめて2015年から継続しておきているユニクロのサプライチェーン―中国のアーティガス工場、カンボジアのジョン・イン工場―における人権侵害に対する国際抗議行動からの圧力もあったのではないかと考えられる。

頑強なユニクロに対する抗議・要請行動キャンペーンの第一弾として、3月8日に香港の銅鑼灣ユニクロ店、3月18日に日本の銀座ユニクロ店前で要請行動を実施。3月23日にはインドネシア・ジャカルタの日本大使館前、31日にはドイツ大使館前にジャバ・ガーミンドの労働者がおしかけた。

ジャバ・ガーミンド社の組合が重ねてユニクロに手紙を送っていることもあり、ユニクロは7月4日にジャカルダのILOオフィスで、ベター・ワークを仲介にして組合との話し合いに応じた。

私たちは、キャンペーンの強化を決め、4回目の手紙を11月1日にユニクロに送り、署名活動のページにはインドネシア語・中国語・日本語のサイトを新たに設けた。組合とユニクロの話し合いがどの方向に進むか、ユニクロはサプライチェーン労働者への社会的責任をはたすのかは、私たちの労働者への支援活動にかかっているといえよう。

ジャバ・ガーミンド争議年表

2012年10月 ユニクロ、ジャバ・ガーミンド社(JG)へ生産委託をスタート
2014年10月 大口のバイヤーであるユニクロが注文をストップする
2015年1月 賃金不払いがはじまり2月から未払い
2015年2月 JGマジャレンカ工場労働者(2500人)が停職に
2015年3月 JGチクバ工場で抗議行動
2015年4月 チクバ工場労働者(1500人)も停職
裁判所がジャバ・ガーミンド社の破産を宣告(正式な工場閉鎖日は5月7日、6月21日が解雇日と決める)
2015年11月 FSPMIはJack Wolfskinがメンバーである FWF(Fair Wear Foundation)に苦情を訴える
2015年12月 WRC は調査報告書を出しユニクロに送る
2016年5月 FSPMIはドイツ大使館前で抗議行動
2016年12月 Jack Wolfskinは労働債権の総額からオーダーした割合で基金を支払う
2017年2月28日 FRは委託工場のリストを発表
2017年3月 War on Wantが署名活動をスタート
2017年3月8日 香港で銅鑼灣ユニクロへ抗議行動
2017年3月18日 東京でユニクロ銀座店へ要請行動
2017年3月23日 ジャカルタ日本大使館前で抗議行動
2017年7月 ILO Better Workが司会をして、ジャカルタでユニクロと組合・WRCの話し合いがもたれる